相続・贈与のエトセトラ②~死亡保険金だって増税になる!?~【2011年 第2回】

【2011年 第2回】 相続・贈与のエトセトラ②~死亡保険金だって増税になる!?~ 

平川すみこ(ヒラカワ スミコ) ⇒プロフィール

このコラムでは、相続と贈与に関して知っておきたい話題をあれこれお伝えします。 平成23年度の税制改正では相続税の大きな改正が予定されていて、我が家も相続税がかかるようになるのか、気になるところですね。今月は前月に引き続き、相続税の改正の中味をみていきましょう。 

 

 

 

前月は、相続税の基礎控除の改正についてお伝えしました。基礎控除の額が縮小されることで、相続税がかかるようになる方たちが増える、という内容でした ね。その他の改正案として、死亡保険金にかかる非課税限度額の引下げもあります。これによっても、相続税がかかってくる方たちが増えるようになるでしょ う。

■死亡保険金にも相続税がかかるの?

<死亡保険の契約内容>
保険契約者(=保険料負担者):夫(被相続人)
被保険者(保険の対象となる者):夫(被相続人)
保険金受取人:妻(被相続人以外の者)

上記の保険契約の場合、夫が死亡すると妻が死亡保険金を受け取ります。
この死亡保険金は、本来夫が持っていた財産ではありませんので、相続財産にはならず、受け取った妻自身の財産になります。ですから、遺産分割等で他の相続人と分割する必要もありません。

相続財産ではないので、相続税の課税対象にはならないのでは?

そうです。死亡保険金は本来の相続財産ではないので、相続税の課税対象ではないはず。でも、被相続人の死亡によって、被相続人が保険料を負担していた保険から、受取人が死亡保険金という金銭を取得するので、相続財産とみなして相続税の課税対象としましょう、ということになっています。

しかし、死亡保険金というのは、遺された家族の生活保障という性質のものなので、まるまる課税対象としてはいかがなものか。ということで、一定金額までは非課税にする措置が取られています。それが死亡保険金の非課税限度額です。

現在の非課税限度額は、次の算式で求めた金額となります。

 


例えば被相続人Aさんの相続人が配偶者と子ども2人の計3人だとすると、非課税限度額は1,500万円。Aさんの配偶者や子どもたちが死亡保険金を3,000万円受け取ったとすると、非課税限度額を超える1,500万円だけが相続税の課税対象になるということです。

■どれくらい非課税限度額が引き下げられるのか?

改正案では、「法定相続人の数」に制限を設けるとしています。現行制度では、法定相続人であれば(注:相続を放棄している者は含め、養子がいる場合は人数制限があります。)一人あたり500万円の非課税金額があるという計算でしたが、 改正されると、次のいずれかに該当する法定相続人のみしか対象になりません。

①未成年者
②障害者
③相続開始(死亡時)直前に被相続人と生計を一にしていた者

先ほどのAさんの場合、相続開始直前に同居していたのは配偶者のみで、子ども2人は未成年者でも障害者でもなく、すでに独立してAさんと別居で生計を一にしてなかったとすると、非課税限度額は500万円×1人=500万円だけとなります。
Aさんの配偶者や子どもたちが死亡保険金を3,000万円受け取ったとすると、非課税限度額を超える2,500万円が相続税の課税対象になってしまいます。

■基礎控除の縮小と非課税限度額の引き下げのダブルパンチ!

それでも、相続税の基礎控除の縮小がなければ、死亡保険金の非課税限度額が引き下げられて、課税対象額が増えたとしても、相続税がかかることはないかもしれません。しかしながら、基礎控除が縮小されるがために、Aさんの例のように相続税がかかってきてしまうことにも!

 

 

 

 

 

また、極端な話、財産がないために家族のために高額の死亡保険金を準備してあげようとしたことで、かえって相続税がかかるようになってしまうということもありますね。相続税は受け取る保険金から納付すればいいわけですが、その分手元に残る金額が少なくなることも考慮しておく必要がでてきます。

相続税の基礎控除の縮小、死亡保険金の非課税限度額の引き下げという改正が行われることによって、死亡保険のプランニングも変わっていくことになるでしょう。すでに死亡保険に加入されていらっしゃる方は、保険金額の見直しを検討する必要がでてくるかもしれませんね。

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