【2011年 第3回】相続・贈与のエトセトラ③~おすすめ?孫への贈与!?(その1)~
平川すみこ(ヒラカワ スミコ) ⇒プロフィール
このコラムでは、相続と贈与に関して知っておきたい話題をあれこれお伝えします。 平成23年度の税制改正では相続税とあわせ贈与税の改正も予定されていますが、子や孫への贈与には贈与税の負担を少なくしようという動きです。
果たして!孫への贈与はおすすめなのでしょうか?
平成23年度の税制改正では、相続税は基礎控除の縮小、死亡保険金にかかる非課税限度額の引下げと増税になる方向ですが、一方、贈与については減税となる方向のようです。若い世代への早期資産移転を促すためで、父母や祖父母から受けた贈与の税負担が少なくなるという改正案になっています。
■孫への贈与にはどんな方法がある?
従来は、祖父母が孫へ贈与をする場合、通常の贈与(暦年課税贈与)しかありませんでした。平成21年の緊急経済対策において、住宅取得等資金贈与については、孫への贈与でも一定金額までは非課税になる制度が時限的(現在は平成23年末までの贈与で終了)ですが創設されています。
そして、平成23年の税制改正では相続時精算課税贈与も対象者の拡大が予定されていて、祖父母と孫の間でも適用できるようになりそうです。
そうすると、平成23年中の孫への贈与については、3つの制度が選択適用できるということになります。
①暦年課税贈与
②相続時精算課税贈与
③住宅取得等資金の贈与特例
■暦年課税贈与の贈与税が減税に!
平成23年度の税制改正では、通常の贈与において、父母や祖父母などの直系尊属からの贈与の場合と、それ以外の者からの贈与とを区分して、直系尊属からの贈与については減税になるような税率構造の改正案がでています。
具体的には課税価格が3,000万円(基礎控除110万円控除後の金額)以下であれば、従来より5~10%の減税になります。
■相続時精算課税贈与の適用対象者が拡大に!
相続時精算課税贈与は、親から20歳以上の子(子が亡くなっているような場合はその子の子も含む)への贈与の場合にしか適用ができませんが、平成23年度の税制改正では、祖父母から20歳以上の孫への贈与の場合も適用できるようになります。
この相続時精算課税贈与では、2,500万円まで非課税で贈与できます。2,500万円越えると20%の贈与税を納付する必要がありますが、贈与者である 祖父または祖母の相続時に相続財産として加算して相続税を計算し、すでに納付していた贈与税が多かった場合は還付があります。
■住宅取得等資金の贈与特例は23年中の贈与まで!
父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた分は、23年中の贈与であれば1,000万円までが贈与税非課税となります。(ただし、贈与を受ける子、孫等はその年の合計所得金額が2,000万円以下でなければ適用不可です。)
この特例は、暦年課税贈与や相続時精算課税贈与と併用ができます。暦年課税贈与とあわせれば1,110万円(特例1,000万円+暦年課税贈与の基礎控除 110万円)まで、相続時精算課税贈与とあわせれば3,500万円(特例1,000万円+相続時精算課税贈与の非課税枠2,500万円)までが、贈与税非課税となります。
以上のように、特に平成23年中の住宅取得等の資金贈与であれば、孫への一定金額までのまとまった資金の贈与を贈与税の負担なしで行うことができますので、贈与税の点からは、孫への贈与は今がおすすめ!ということになるのかと思います。
これを機会に祖父母がかわいい孫に旅をさせる・・・もとい、家を持たせる。
孫からはおじいちゃん、おばあちゃんに甘えてみる。
というのもいいかもしれません。
次回は贈与の際の注意点などについて触れていきます。
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