住宅ローンは若手行員の登竜門【2011年 第2回】

【2011年 第2回】 住宅ローンは若手行員の登竜門 ~住宅ローン~

奥田 智典(オクダ トモノリ) ⇒プロフィール

今や銀行の収益基盤を支える住宅ローンですが、この住宅ローン、実は若手行員の教育に活用される側面もあります。今回は普段あまり表に出ない、住宅ローンのもう一つの顔について考えてみたいと思います。

こんにちは。三寒四温の言葉通り、毎日目まぐるしく気候が変わっていきますね。今年の冬は例年以上に大雪で、雪の多い地域のかたは特に大変だったと思います。春まであと少し。元気に乗り切りたいものですね。

 

■住宅ローンは若手行員の登竜門

さて、今回は普段あまり表に出ない、住宅ローンの知られざる裏側について述べていきたいと思います。住宅ローンは今や銀行にとっての花形商品ですが、私 が銀行勤務をしていたほんの十年前まではどちらかといえば脇役の扱いでした。当時は住宅ローンといえば住宅金融公庫であり、民間銀行の住宅ローンは補完的な意味合いが強かった時代でした。

そして住宅ローン業務はどちらかといえば、若手行員の勉強の場、あるいは少々回り道をした中堅行員がアイドリングする場として使われるケースが多く、実際私が勤務していた支店でも、住宅ローンは専ら若手行員の担当でした。というのも住宅ローンには融資のイロハが凝縮されており、さらにしっかりしたマニュアルがあるため、経験の少ない若手でも業務が進めやすいと考えられていたからです。

住宅ローンといってもれっきとした金銭消費貸借契約。法律上は企業向け融資と何ら変わりありません。さらに住宅等不動産の知識も必要ですし、対象物件を担保に取る(抵当権を設定する)手続きを通じて、銀行に必要不可欠な保全の考え方や権利関係、民法も学べます。それらが一連のフローチャートに沿ってある程度機械的に進められるため、初めて融資実務に触れる若手行員にとっては格好の教材になるのです。

■銀行員がみな住宅ローンを知っている訳ではない

と、ここまでの話をふまえると、住宅ローンの担当者は主に経験の浅い若手行員となると推察されます。ところが住宅ローンが花形商品となった今では、人材育成にばかり時間とコストを割く訳にもいきません。そこで登場したのが住宅ローンセンター(住宅ローン専任担当)。各銀行とも積極的に住宅ローンセンターに人材を登用し、これまでの営業担当者が完結させるスタイルから、住宅ローンはその専任担当が業務を完結させる、分業制に変化してきています。

となると、銀行員でありながら住宅ローンのことを知らないものが存在することになります。もちろん勉強はしているのでしょうが、実務経験のない銀行員は確実に増えています。もし人員配置の問題で、経験のない銀行員が担当になったとしたら…。実際、私がこれまでにお受けした住宅相談においても、段取りの悪さから顧客の不信感を招く銀行担当者が実在しました。そのせいか、ここ最近はいきなりローンセンターに行くのではなく、ハウスメーカーや工務店の営業マンが銀行への取り次ぎも兼ねて行うケースが主流となっています。住宅ローン実務において、銀行員の存在感が薄まっていると感じるのは私だけでしょうか。

■住宅ローン利用者はどう対処すべきか

ハウスメーカー、工務店の営業担当者にお任せになると、殆どの場合提携ローンを組む銀行に誘導されます。ローン期間や金利方式など、利用者が比較検討することはまずありません。選んだ住宅ローンが自分にあっていればよいのですが、あっていなければ借りた後が大変です。そうなっても営業マンや銀行員は助けてくれません。

これから住宅ローンを利用されるかたはぜひ、住宅ローンは自分で決められることを覚えておきましょう。そして、住宅ローンを取扱う銀行員が必ずしもライフプラン、マネープランのことを知っている訳ではないことも知っておきましょう。その意味では、身近なファイナンシャルプランナーに、その住宅資金計画がフィットしているのか相談してみることをお勧めします。住宅ローンだけでなく、ライフプランをふまえた最適なアドバイスが受けられますよ。

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