銀行が3年固定金利を推す理由【2011年 第8回】

【2011年 第8回】 銀行が3年固定金利を推す理由 ~住宅ローン~

奥田智典(オクダトモノリ) ⇒プロフィール

以前ほどの割合ではないものの、いまだ高い割合で選ばれる3年固定金利住宅ローン。
その理由は一体なんなのか?銀行はなぜ、3年固定金利を推すのか。今回はそこにスポットをあてて話をしていきます。

残暑、というにはあまりにも厳しい暑さが続きますね。まだまだ当分、暑い日が続きそうです。
体調管理には気を付けて、夏の終わりをしっかり乗り切りましょう。

 

銀行が3年固定金利を推す理由

さて、今回のテーマは『銀行が3年固定金利を推す理由』です。つい数年前まで、住宅ローンといえば3年固定金利が当たり前でした。住宅ローン利用者の実に60%以上が、3年固定金利住宅ローンを選んでいたのです。2010年より住宅金融支援機構の全期間固定金利住宅ローン『フラット35』が1%の金利優遇を始めた影響で、若干3年固定金利のシェアは下がりましたが、それでも根強い人気。そしてこのたび、その『フラット35』の金利優遇が2011年9月末までの申し込み分で終了すると決まり、再び3年固定金利住宅ローンが脚光を浴びてきています。

住宅ローン金利の種類 

住宅ローンを借りるにあたり、通常は以下の3つのパターンから金利を選ぶことになります。

その3つとは、
①  変動金利型
②  全期間固定金利型
③  一定期間固定金利型
の3つ。今回のテーマである3年固定金利住宅ローンとは、③一定期間固定金利型のグループに属します。具体的には借入から3年間の金利は固定。3年経過後に再び金利のパターンを選ぶという仕組みです。

3年後に金利を見直すということは、当然3年後の金利水準で選ぶことになりますので、借入時よりも金利が上がっていれば返済額も上がり、金利が下がっていれば返済額も下がることになります。この、「3年後に金利を見直す」というのがこの住宅ローンの最大のポイントなのです。

一般的に銀行は、住宅ローン金利を毎月変更しています。その金利は、当然銀行がお金を準備するコストを考え、設定します。要は仕入れ代金に一定のもうけをのっけて、金利を決めるのです。したがって金利を固定にすると、途中で仮に仕入れコストが上がった場合も銀行がかぶらないといけません。一方変動金利であれば基準は変わっても、のっけるもうけが同じなら銀行にとって影響は殆どありません。

つまり、銀行にとっては、3年固定金利を含む、変動金利ローンを増やす事が、収益増強に直結するのです。前回のコラムにもつながる話ですが、銀行が住宅メーカーや宅建業者と組んで、3年固定金利を推す理由は、そこにあります。

実際、住宅メーカーさんのチラシの返済シミュレーションって、ほぼすべて3年固定金利で計算していますものね。その徹底ぶりはスゴいの一言です。

3年固定金利は、消費者心理を巧みについている!?

ここ2年ほどは、民間銀行でも10年以上の固定金利をお勧めするケースが目立っていました。ただそれは、自主的にというよりも、『フラット35S(借入当初10年間金利1%優遇)』への対抗措置が主な原因。中には全期間固定~10年固定と金利を見せて、3年固定や変動金利の安さをアピールし、契約につなげる銀行マンも存在するようです。

確かに、見た目の金利と返済額で比較すれば、3年固定金利は魅力的。そして上がる、上がると言われ続けて10年近くになる金利水準も、結局のところはさほど上昇していません。日本の景気も先行き不透明だし、ホントに金利上がるの?と懐疑的な見方をする人も増えています。

しかし、3年固定金利はあくまで借入当初から3年間限定の権利。3年後には再び金利見直しが必要になります。金利の中身も「店頭表示金利(基準金利)- 優遇金利」というものであり、店頭表示金利だけをみれば、未だ2%台後半~3%台前半という水準です。優遇金利の幅が減少すれば、おのずと金利は上昇し、返済額は増えます。

さらに、日本の財政事情、物価上昇、資源関連の価格高騰等を考えれば、金利上昇の可能性は確実に高まりつつあります。見た目の安さだけで飛びつくのは、やめておいたほうが無難です。

3年固定金利と上手に付き合うコツ

とはいえ低金利メリットを今、最大限に活かせるのが3年固定金利であるのも事実。したがって大切なのは、ライフプランをしっかりたて、仮に金利が上がり、返済額が増えたとしても対処できる体制づくりをしておくこと。そして、3年後の金利見直し時に、銀行との交渉や、場合によっては借り換えも出来る準備をしておくことです。

もうひとつ、その計画を遂行するのに忘れてはならないのが、金利見直しのさい相談に乗ってくれる、中立な相談窓口を持っておくこと。建築した住宅メーカー、工務店やローン取引銀行の中には、異動や退職等で担当者がいなくなってしまうケースが散見されます。いつでも気軽に相談できる、相談窓口があればより安心ですし、その役目を果たせるのがライフプランと住宅ローンに精通したファイナンシャルプランナー(FP)だと思います。身近なFPに、気軽に相談をしてみてください。きっと、何かしらの安心材料と解決策が見つかりますよ。

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