【2011年 第10回】 誰にも出来ない金利予測 ~住宅ローン~
奥田 智典(オクダ トモノリ)⇒プロフィール
上がる、上がると言われながらも過去最低水準の金利が続く住宅ローン。とはいえ長期的には上がる可能性が高いともいわれます。今回は今後の金利予測をふまえ、住宅ローン金利プランの考え方についてお話します。
■誰にも出来ない金利予測
職業柄今後の日本の景気予測や、金利の動向についてよく質問をお受けします。特に住宅ローン金利については、結構な頻度で質問をお受けします。確かにこれから家を建てる人はもちろんのこと、既に住宅ローンを借りている人にとっても金利動向は気になるところでしょう。
そんな質問を受けたときに私が決まっていうセリフとは…『それは誰にもわかりません』
です。何をそんな無責任に、という声が聞こえてきそうですが、私は逆に根拠のない予測で世論を惑わす一部の経済評論家のほうが、よっぽど無責任だと思います。実際、日本のバブル崩壊も、そのあとの失われた10年も、リーマンショックも、殆どの経済評論家は予測できませんでしたものね。
ただ、私はそのあとに必ずつけくわえるセリフがあります。それは、『とはいえ、優遇金利を使った住宅ローンは、次回金利見直しのさいまず確実に金利が上がります』ということ。
いったいどういうことか、解説いたしましょう。
■優遇金利のワナ
一般的に、変動金利住宅ローンや3年固定住宅ローンは、借入当初に金利優遇措置を受けています。私たちがよく見聞する金利は、実は店頭表示金利(基準金利)から優遇金利を引いたものです。例えば基準金利が2.85%、当初3年間の優遇金利が1.95%の場合、当初借入金利は(2.85-1.95)=0.9%となります。
そして上記のローンを借入した場合、3年後の金利見直し時には当然ながら優遇措置は終わります。多くの場合『当初優遇期間終了後も全期間1%優遇!』とPRされていますが、仮に上記の例で基準金利が変わらなかったとしても、借入金利は(2.85-1.00)=1.85%となり、借入金利は上がります。全期間1%優遇!といっても、当初借入時よりは確実に優遇幅が少なくなることを忘れないようにしましょう。
■どうなる?住宅ローン金利
今、住宅ローン金利は過去最低水準の状況が続いています。日本の景気が低迷し、市場全体が超低金利となっていることに加え、銀行間での住宅ローン競争が激化していることが要因です。
しかし、よくみてみるとこの超低金利の状況下においても、民間金融機関の住宅ローン基準金利は変動で2.5%前後、3年固定では3%前後となっています。基準金利だけ見ればそこまで超低金利、ではありませんね。これって、金融機関がいざというときには優遇金利幅を縮小し、いつでも金利を引き上げられる体制をとっていると言えなくはないでしょうか。
実際、金融機関同士の統合合併の動きは、再び活発になりつつあります。もし将来的に金融機関の数が減り、会社ごとの優劣がはっきりした場合、今ほどの住宅ローン競争はなくなる可能性があります。そのときに果たして今ほどの優遇幅は維持されるでしょうか。
もちろん、従来からたびたび話題になる、日本の財政悪化⇒国債の信用劣化⇒長期金利上昇⇒住宅ローン金利上昇というシナリオも、可能性は否定できません。
■今後の傾向と対策
世界的な景気低迷、金融不安を背景とした円高が続く現状から判断すれば、ここ1~2年で住宅ローン金利が急激に上がることは考えにくいでしょう。とはいえ、現時点で過去最低水準の住宅ローン金利であることに間違いはなく、今以上に金利が下がることは考えにくいと思われます。どちらかといえば、今後緩やかに住宅ローン金利が上がっていく可能性が高いのではないでしょうか。もちろんその上昇幅とペースは予測出来ませんが。
大切なのは、金利が上がってもあわてないよう、事前に手を打っておくこと。金利上昇リスクを避けたければ長期固定金利が良いと思いますが、そのぶん借入当初の支払い負担は多くなります。今後の金利上昇を警戒するあまり、マイホーム計画がとん挫しては意味がありません。ライフプランをふまえ、自分達に最も適した住宅ローンプランを選びましょう。
住宅ローンは金利で選ぶな
ライフプランで選べ!
ですよ。
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