【2011年 第11回 】繰上げ返済重視の落とし穴 ~住宅ローン~
奥田 智典(オクダ トモノリ) ⇒プロフィール
住宅ローンと賢くつきあう方法として、繰上げ返済の活用は欠かせません。しかし、中には繰上げ返済をしてしまったがゆえに、その後の生活にしわ寄せが来てしまうケースもあります。
今回は繰上げ返済の考え方についてお話します。
■繰上げ返済とは何か?
住宅ローンを賢く返す方法と聞いて、多くの人がピン!とくるのが『住宅ローンの繰り上げ返済』でしょう。住宅ローンのハウツー本でも必ず取り上げられるほか、住宅ローン相談を手掛けるファイナンシャルプランナー(FP)や住宅ローンアドバイザーも必ず触れる話題。それが『住宅ローンは繰上げ返済で賢く返済しましょう』というもの。
事実、私の知人にも血のにじむような努力をして、ガンガン繰上げ返済をしている人がいます。とにかく1年でも早く終わらせたい、1円も無駄な金利は払いたくないと。その徹底ぶりは知人ながら尊敬の念を覚えます。
繰上げ返済とは、毎月(またはボーナス時)の返済とは別に、元金をまとめて返済することをいいます。通常住宅ローンは元利均等返済という方式を使いますが、この方式では毎月の支払額(元金+利息)が返済期間を通じて一定になるよう、自動計算されます。
そのため、元金がなかなか減らず、結果として多くの利息を支払うことになります。そこで繰上げ返済をすることで、利息の負担を軽減しようというのです。
■繰上げ返済重視の落とし穴
確かに繰上げ返済の効果は大きく、出来ることなら活用したいところです。とはいえやりすぎには注意が必要。なぜなら、確かに長い目で見れば利息の軽減効果はあるものの、そのぶん今手元にある現金が減ってしまうため、すぐに必要なお金が足りない事態が起こり得るからです。
実際に、繰上げ返済をし過ぎたため教育資金が足りなくなり、結局住宅ローン以上に金利の高い教育ローンを利用せざるを得なくなったケースもあります。そうなると何のために繰上げ返済をがんばったのか、わからなくなりますよね。
また、仮に返済が厳しくなった場合に、住宅ローンの返済条件を緩和してくれる銀行もここ最近は多くなりましたが、一度でも繰上げ返済をして返済期間を短縮すると、条件変更は受けられません。前倒しで返済し、最終的に払えなくなってしまっては元も子もありません。
■繰上げ返済の活用法
大切なのは長期的な視野にたち、教育資金、老後資金をふまえた返済計画をたてること。そのためにも、繰上げ返済の前にはライフプランニングを行うことが重要です。ライフプランニングをすることで、繰上げ返済についてもいつ、いくらのお金を返済すれば良いのかがわかります。
例えば夫婦ともに30歳前後で、お子様が0~2歳のご家庭であれば、お子様が独立する段階でもまだ50代前半。お子様が小さいうちは無理に繰上げ返済をせずに教育資金を優先し、お子様が独立した後に夫婦共稼ぎで返済ペースを一気に上げる方法だってあるのです。
なんでもそうですが、バランスが大切ということですね。ライフプランニングをしっかりおこない、計画的に繰上げ返済をすることで、住宅ローンと賢くつきあいましょう。
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