長屋暮らしの庶民、ではどんな人が持家を?【2011年 第4回】

【2011年 第4回 】長屋暮らしの庶民、ではどんな人が持家を? ~ウチの家計簿、武士の家計簿~

西谷 由美子(ニシタニユミコ)⇒ プロフィール

時代劇といえば、長屋の八つぁん、熊さんなどの職人さんがおなじみです。では借家、持ち家、そのあたりはどうなんでしょう。

 

 

 

 

 

 

自然災害と日本

まずは今回の東北・関東大震災で被災された方々へ、心よりお見舞い申し上げます。九州で普通に生活できていることに少し後ろめたさを感じながらですが、募金そして今後の復興、私にできることをそれなりに協力させていたく心づもりでおります。

しかし自然の脅威を相手にすると、人間はなんとちっぽけな存在だろう、と感じることしばしば。そういえば、以前読んだ本に「災害史観」という言葉が出てきました。日本は歴史上、他国との戦争で人々の命が失われることが他の大陸に比べて少なかったのですが、それとは逆に、「台風、地震、津波」などの自然災害により多くの命や社会資本が失われることが繰り返されてきた・・と。

さらに、戦争では敵を憎むことができますが、日本の場合は相手が自然ですので憎むことも困難。したがって、「しかたない。」「もう一度やりなおそう」という気持ちで何度でも立ち上がり荒廃した国土を復活させてきた・・・と。今回も力を合わせて立ち上がらなければいけませんね。(大石久和 「国土学再考」 2009刊)

お江戸の住まい事情

実は今回の地震発生の日、娘が春より一人暮らしを始めますので一緒に不動産屋めぐりをしておりました。噂の「ゼロ・ゼロ」物件だとか、古い物件の大家さんのディスカウントぶり等、身をもって体験することができました。で、契約に至ったのはほぼ6畳の広さのワンルーム、台所のほか小さいながらもトイレ、お風呂が別々についているタイプです。まあ築20年ほどで納得の御家賃。

で、気が付いたのですが、「武士の家計簿」の江戸時代。江戸の庶民が暮らしているのは狭いけれども皆が仲良く肩寄せあっている長屋、ですよね。TVでは畳の間が1つあるいは2つあり、土間に流しやかまどがあって、お風呂なし、トイレは共同。家族で住むにはかなり「狭い!」っていうイメージ。

これには理由があり、当時の江戸は武家地60%、寺社地20%、町方地20%の割合。ところが人口は武士関係50万人に対して町方も50万人ほど。狭いところに沢山の人が住まなければならなかったんですね。

表通りに面して一階にお店、二階に住居の商店街が続き、その裏手に集合住宅の長屋がある、というのが一般的な街の様子だそうです。各地に当時の暮らしを再現した資料館などがありますが、そこに再現されている長屋の多くは、な、なんと間口9尺(約2.7m)、奥行き2間(3.6m)。つまり全体が6畳ほどの広さなので、土間を除くと畳の部分は四畳半、多くは押入れもなし。ここに家族4人で住む・・・ちょっとした我慢比べの気持ちになってしまいました。娘の部屋より狭いし。

江戸時代のお家賃

お家賃については、お江戸の中心日本橋辺りの長屋の場合、一か月で銀12匁(6畳=3坪として)、芝辺りは9匁、根津で5匁程度。以前に使用した換算表ですと、2万円~4万8千円の計算になりますね。今ほど充実していない分、お手軽な値段ではないでしょうか。

お家賃は近所に住む大家さんが集めますが、実は当時の「大家さん」=管理人さんであり、所有者さんは別のところに住んでいる場合が多かったそうです。よく 「大家といえば親も同然」とかいいますが、当時は5人組の連帯責任制度があるので、組内から犯罪者が出ると皆さんの連帯責任。これが親身になってお世話してくれる理由だったらちょっとさみしいかも。

それはさておき、自然災害に加え火事も多かった江戸時代。再建しやすいようにそこそこ安普請の賃貸物件が多く、町で暮らす庶民は一生を賃貸で過ごす。贅沢はできないけど、最近話題の「無縁社会」などという寂しい風潮とは無縁の生活をしていたんですね。先月「プライバシーのない生活は・・・」などと言いましたが、プライバシーを得ることで、逆に失ってしまったものもある、という事ではないでしょうか。

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