変わらぬ夢の宝くじ事情【2011年 第12回】

【2011年 第12回】 変わらぬ夢の宝くじ事情 ~ウチの家計簿、武士の家計簿~

西谷 由美子(ニシタニ ユミコ)⇒ プロフィール

左団扇で暮らすための最短の道は宝くじ?そういえば江戸時代の宝くじは「富くじ」なんて名称でしたよね。

 

 

 

 

 

 

江戸時代からある宝くじ

年末が近づいてきます。大掃除なんぞしたくなくて目をTVに転じると、あら、西田敏行さんの武将姿。落ち武者が裁判で証言する、とかいう映画は初日からの30日間で動員が260万人、興行収入30億円を突破してるそうですが、まだTVCMしてたの?

いえいえ、よく見ると「今年は攻めてみませんか」とのことで年末ジャンボをガッツリ買いましょうよ、というお誘いでした、うんうん。「年末ジャンボ~宝くじ~」、この季節、必ずメロディを伴って流れます@私の頭の中。

さて、お約束の展開、江戸時代にも「宝くじ」はありましたよね。「富くじ」という名称が有名。時代劇では、神社やお寺の境内で、銛で木の板を突いて「への一番、大当た~り~!」(太鼓がドンドン)なんて場面、想像しちゃうのは私だけでしょうか。

お寺や神社が勧進元の富くじ

何でも昔からあった「富くじ」は現在のギャンブルのように「将射心を煽る」ことから度々禁止になりましたが、江戸時代は元禄の頃、寺社に限って許されたそう。お寺や神社が勧進元となって富くじを行うことで、幕府は改修のために出していた補助金をカット、寺社はこれで改修費用を捻出、庶民は夢を買いハッピーに、という三方一両損ならぬ三方一両得の理論がそこにはあったと言えそうです。

有名だったのが谷中の感応寺、目黒の龍泉寺、それに湯島天神、これが「江戸の三富」と呼ばれたそうです。仕組みはお寺が業者に依頼、業者が寺から数千~数万本のくじを全部購入して個別に販売、抽選後に換金。当たりくじは百本で1等が千両、以下三百両、二百両、二十両、十両が主要な当選金というのが記録にあるそう。

ある時は業者がくじ1枚を12匁で購入し、13~14匁で販売。差額は業者の手数料になります。銀13匁は、現在で言うと5万2千円。千両は3億円ほどでしょうか。現在の年末ジャンボは1枚三百円で一等二億円です。連番10枚買うと三千円で前後賞も合わせて三億ですから、ずいぶんとお高い感じ。

千両当選しても手元には三十両ほど

でも実は「割札」という制度があって、数人でお金を出し合って1枚買う制度もあったそうです。(誰がどの札の何分の一を買ったかは、しっかり業者さんが記録していたそうです、さすが律儀な日本人!)

ただし、千両当選しても全額懐に入るわけではなく、寺社への寄進、業者さんへのお礼が差し引かれて当選金が支払われ、その額は大体三十両ほどだったとか。千両と三十両、3%ですね。う~ん、最初から存在した習慣なのでしょうがもう利益は出てるじゃん、お部屋借りる時の礼金や更新料を思い出して、何だか複雑な気分。現在は非課税なんですけどね。

日本の宝くじはボリすぎ?

あ、ここで3%召し上げられることから、「控除率」という数字を思い出してしまいました。簡単に言うと総売り上げから支払いに回らず業者さんが経費や利益として手元に残すお金の割合です。実はこれって、社会学の中で研究されてもいるんです。有名なのは大阪商業大学で学長を務められていた谷岡一郎先生。著書「ギャンブル・フィーバー」、「ツキの法則」などの中からの引用。

 

 

 

 

 

すごくザックリ言うと、年末ジャンボ1ユニット買い占めて、一等前後賞から末等まで全部賞金を独り占めしても、買い占め代金の半分しか賞金として戻ってこない、ということになります。

こういうことから、「日本の宝くじはボリすぎだ!」という主張もあります。財団法人日本宝くじ協会は天下りの人のお給料などを取りすぎで、賞金に回すお金が少なすぎる、と。(これ、事業仕訳の時に話題になりました。)

私なんかその点わかってて、「震災復興に寄付だよ。」とか「ゆうべ夢に蛇が出てきたから。」なんて言って楽しんでるんですが、下手をすると年末ジャンボで一等当選の確率(1ユニット1000万枚中一等は2本)よりはその帰りに交通事故にあう確率(年間交通事故負傷者数は100万人前後で日本の人口は約1億2千万人)の方が高い、を地で行ってしまいますのでご用心、ご用心。

さて、今年も終わりですね、堅実に締めようと「武士の家計簿」からの話を。明治維新後、海軍に奉職した猪山家ですが、資産運用に関して仲間由紀恵さん扮する妻お駒は、農地を買っても、豊作・不作に左右されて利率は3~5%、それよりは10%近い運用益が見込める賃貸経営の方が有利だ、と冷静に判断し夫の直行さんに進言されております。偉いな~、富くじなどには手を出されなかったんでしょうね。

それでは来年も皆様におかれましては、夢のある明るい一年を冷静、堅実に過ごされますよう祈りながら、私はこれからロト6の当たり数字を予想することにいたします(笑)。

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