【2011年 第16回】 エンディングじゃないノートだからこそ、今を大切に⑧~「マイナスの『財産』」も忘れずに “終わり”ではない「エンディングノート」
高原 育代(タカハラ ヤスヨ)⇒ プロフィール
自分自身の財産を正確に把握するためには、「マイナスの『財産』」に目をつぶってはいけません。住宅ローンやその他の借入金はもちろん、財布のクレジットカードのこともお忘れなく。
マイナスの財産
前々回、前回と、ノートで自分の「財産」を整理することについてご提案をしてきました。
「財産」というと、“プラス”イメージを思い浮かべることが大きいですが、自分の財産のすべてを考える場合には、“マイナス”を差し引きすることを忘れてはなりません。
住宅ローンといった大きな借り入れについては、銀行などの借入先から送られてくる「残高証明書」等を参考にして、ノートに「借入先の名称」「連絡先」などを記載しておきます。
その際、借入金の残高がいくらなのか、あと何年で返済が終わるのかなどについても確認してみましょう。自分のライフプランに照らし合わせながら、ローンの借り換えを検討したり、繰り上げ返済を考えたりするよい機会になるはずです。
クレジットカードの支払いも負債
住宅ローンのような大きな借り入れをしていない人でも、財布の中に、クレジットカードを持っている人は多いと思います。
JCBが調査した「クレジットカードに関する総合調査2009年度版(2010年4月発表)」の概要をご紹介しましょう。
○クレジットカード保有率は82.8%
○保有枚数は、1~3枚の人はそれぞれ約20%、7枚以上の人も約10%。保有枚数平均は3.5枚。
○携帯電話料金・電話料金・ガス料金・高速道路料金・保険料など、毎月定期的な支払の利用が増加
○生活費に占めるカードの決済比率は年々上昇
本来は、たとえ翌月一括払いであっても、支払を先延ばしにしているという点では、クレジットカードで支払った代金は負債です。が、決済手段として定着しつつある現状からすると、それをつい忘れてしまいがち。
電子マネーなども含めて“見えないお金”のやりとりをする機会は増える一方だからこそ、自己管理のための“見える化”にはノートが役に立ちます。
紛失や盗難というリスク管理上からも、「カード会社名」「連絡先」などの情報は整理しておきたいものです。書き出すことによって、利用の少ないカードに気づいて解約すれば、ムダな年会費の節約もでき、管理もラクになりますね。
借入金情報の整理
さらに、自分や家族のライフプランの延長として、「相続」という財産の引き継ぎも考えると、その他の借入金がある場合、情報の整理が重要です。
それは、相続で引き継ぐ財産である「遺産」はプラスとマイナスのすべてが対象となるからです。
現在の日本では、相続が発生する原因は、人が亡くなった場合であると民法で定められています。
<民法第882条:相続は、死亡によって開始する。>
人が亡くなると同時に、つまり“勝手に”、一定の身分関係のある相続人に財産権が移転するのです。
「私が財産を相続します」といった意思表示や、「何らかの書類にハンコを押す」といった手続きとは無関係に…なのです。
不動産の登記名義や預貯金の名義がまだ亡くなった人のままであっても、法律上、亡くなると同時に権利は配偶者や子どもなどの相続人のものに。ただ、名義 を変更するという手続きが終わっていないだけということです。
それはマイナスの財産についても同様です。
プラスもマイナスもひっくるめて財産権を自動的に引き継ぐことになるというわけですが、相続人としては、財産全体を差し引きして結果的にマイナスなので あれば、まったく引き継ぎたくないとか、特定の財産だけを引き継ぎたいなどと思うことでしょう。
民法ではそれを「期限」や「条件」をつけて、相続権を放棄すること、あるいは限定的に引き継ぐことを認めています。
相続についての詳細はここですべてを記すことはできませんが、少なくとも知っておきたい「期限」の原則は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内(民法第915条1)」であること。
大切な人の死を悼み悲しむ時期の3ヶ月というのは、本当にあっという間です。その間に、相続権についてどうするかという大きな決断をしなければならないのです。
借入金があるとか、誰かの連帯保証人になっているといったことは、家族に対して伝えにくい事情がある場合もあるかもしれません。
が、プラスマイナスひっくるめた財産を引き継ぐ家族のことを思うのであれば、マイナスの情報こそ、きちんと整理しておくことが大切だといえるでしょう。
この記事へのコメントはありません。