「もしも」に備える⑤~親にはなかなか聞けないお葬式やお墓のこと【2011年 第22回】

【2011年 第22回】「もしも」に備える⑤~親にはなかなか聞けないお葬式やお墓のこと “終わり”ではない「エンデングート」

高原 育代(タカハラ ヤスヨ)⇒ プロフィール

自分自身だけの問題ではないのがお葬式やお墓のこと。なのに、率直に親と向かい合って親の望みやわが家のしきたりを聞いていなかったり、あるいは、親から子どもに伝えていなかったりすることが多いようです。

 

 

 

ハッピーライフノート

“終わり”ではない「エンディングノート」と題して連載コラムをお届けしていますが、その元となるのは、私が所属するNPO法人で2年前の2009年に編集・発行した「ハッピーライフノート」です。このコラムの第18回からお届けしている「『もしも』に備える」というのは、ノートの最終章のタイトルです。

ノートを編集する際の編集委員共通のテーマは、人生の最期を意識した人だけではなく、もっと早い時期から自分の棚卸をするために書き込むためのツールを目指すことでした。ですから、時間軸で自分を振り返る1章から3章に対して、備えを目的とする4章のタイトルについては、編集委員が意見を出しあって議論したことの一つです。

細かいことですが、「もしも」とするか「万一」とするか…。

医療の発達によってどんなに寿命が伸びたといっても、生まれてきた以上いつかは死ななければなりません。そんな事実はわかっていても、なかなか「死」を正面から受け止めることはむずかしく、できれば避けたいと誰もが思います。ことばの上だけは“もしも”とか“万一”というようなオブラートで包んだ表現を使って<ないこと>にしようとするのは、せめてもの工夫なのかもしれません。

前回までのコラムにも書きましたが、自分自身が治療・介護・看護を必要とするようになった場合にどうしたいのか、実際に逼迫した状況になってからではなかなか思うようにならないことも多いからこそ、まだ余裕のある時から他人事と思わずに準備をしておきたいものです。

お葬式やお墓の問題

さらに、自分自身だけの問題ではないのが、お葬式やお墓のことです。

冠婚葬祭の中でも、お葬式というのは時期を選ぶこともできず、しかも本人不在で行われるという特殊な儀式です。実際に儀式を執り行う家族にとって、大きな“けじめ”であると同時に、亡くなった人の望みもなるべくなら叶えてあげたいと思いもあるでしょう。
感情的に混乱することも多い中、迫られた時間の中で粛々と進めなければならないので本当に大変です。

私は34歳の時に65歳の父を見送りました。50代前半に要介護状態となった父ですから、それこそ面と向かってお葬式に関しての希望を尋ねたりする機会はありませんでした。

最期の時も突然ではありませんでしたし、嫁いでいた私は喪主の母と長男である弟を支える立場でしたが、それでもお通夜から告別式を終えるまでの数日は全く初めてのことばかりで、ひたすら大変さを実感しました。すべてを終えた後に自宅へ戻ってから、見送った後の寂しさとともに、「これで良かったのかなぁ」と不安な気持ちなど複雑な感情を持った記憶があります。ただ、父の横たわる棺の横で、お通夜の一晩をうたた寝半分過ごせたことは、私自身のひとつの区切りとなっています。

親にはいつまでも健康で長生きしてもらいたいものですが、平均寿命あるいはそれを超える年齢の長生きをされた親を見送るとなると、子ども達も60代・70代あるいはそれ以上となりますから、お葬式やその後の法事などの一つ一つが、精神的にも体力的にも大変な場面は増えるのも事実でしょう。

お墓や法事その他、「わが家のしきたり」などについては、やはり前もって親から子ども達へ伝えておきたいところです。
いくつになっても、子どもから親に対してはなかなか切り出しにくい話題です。

元気なうちにこそ伝えて

両親ともに健在!という場合、子ども達にとって親はいつまでも元気で当たり前と、ついつい頼りにして甘えがちのようです。が、元気なうちにこそ、子ども達にたくさんのことを伝えてあげてください。
必ず迎える「その時」。でも、それがいつかはわからない。

自分にとって、また家族にとって、望ましいとは限らないときに訪れるかもしれないからこそ、大切なことは常日頃から備えをしておかなければならないのでしょうね。
でも、なかなかその“とっかかり”をつかめずに毎日を過ごしてしまうことが多いのですが…。

小さなことをきっかけにして、伝えたいことを書き留める場所として、自分だけのノートを活用してみてはいかがでしょうか。

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