【2011年 第23回】「もしも」に備える⑥~生前のさまざまな契約と遺言書 “終わり”ではない「エンディングノート」
高原 育代(タカハラ ヤスヨ)⇒ プロフィール
相続を前提にした場合、書くだけでは法的効果のない「エンディングノート」と法的に定められた方法による「遺言書」、それぞれのツールの特徴を知って上手に活用したいものです。
エンディングノートというツールをどう活用するか
私は現在、京都府金融広報委員会の金融広報アドバイザーの委託という立場からも活動をしています。地域や学校その他団体などから日本銀行京都支店内の事務局を通じて頂く依頼に沿って、身近な暮らしのお金に関わるテーマでの講演会やワークショップの派遣講師を務めています。
先日、同じ金融広報アドバイザーで税理士の方が、一般消費者向けに「エンディングノート」をテーマとしたご講演をされたので私もお話を伺ってきました。
税理士という立場から、相続を前提として、「エンディングノート」や「遺言書」といったツールをどう活用して備えるかといったお話でした。
法的に定められた方法によって準備された「遺言書」があると、トラブルが起こる確率を下げることができ、相続の手続もスムーズに行うことができます。実務上必要な「遺言書」の書き方などについて細かい点を丁寧に教えて頂きました。
でも、法的効力のある緻密な「遺言書」を作成するとなると、そう簡単ではありません。
自分の思いを具体的に書き出してみる
そこで、その前段階として「エンディングノート」という形式にとらわれないもので、まずは自分の思いを具体的に書き出してみる。あらためてその役割を再認識できました。
“わが家に限って相続でトラブルなんて起こるはずがない…”
平時は誰しもそう思うもの。
にもかかわらず、フツーの一家が相続をきっかけに後味の悪い関係になってしまうことがあるのはなぜなのでしょうか。
相続のトラブルというのは“カンジョウのもつれ”だと思います。
“カンジョウ”というのは、「勘定」と「感情」という2つの<掛詞>なのではないか、私はそのように考えています。
「勘定=お金」と「感情=気持ち・思い」の両面を形にするために、「遺言書」と「エンディングノート」の2つのツールを上手に使いたいものです。
私が編集に関わったということでご紹介している「ハッピーライフノート」の最後の方に、<生前契約について>という項目があります。
具体的には、「財産管理契約」「任意後見契約」「葬儀の生前予約」「献体」「アイバンク」「臓器提供」といった各種の契約についての有無についてチェックする欄と、契約している場合の連絡先・登録先などの記入欄を設けています。
エンディングノートに記載するこのような契約についての欄は、あくまでも自分の「覚え書き」としての役割であって、ただノートに記入するだけでは効果はありません。
それでも、あえてこういった項目を設けたのには理由があるのです。
ときどき、実は互助会等で葬儀の費用を積み立てた契約があったのに、そのことを家族に知らせていないケースなどを耳にすることがあります。
経済的にムダになってしまうという「勘定」の観点からももったいないですが、それ以上に、ご本人の生前の希望がかなわないという「感情」の観点からも悔しいですよね。
せめて契約の有無だけでもノートに記されていれば、家族に知らせる可能性を高められるのではないでしょうか。
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