【 2009年 第 1 回 】どうなる2009年の経済 資産運用
有田 宏(アリタ ヒロシ)⇒プロフィール
サブプライム・バブルの破裂
2008年の経済、前年(2007年)のアメリカのサブプライム・バブルの破裂に始まり世界的な金融危機、そして実体経済の急減速。
当初考えられていたシナリオのうち、実現したのはより悪いシナリオ。
金融の世界では世界的な株安、円とドル高(ドルは円に対しては下落しているが他通貨に対しては上昇:グラフは2008年4月14日から12月8日までのユーロと円のドル表示での価格、ただし円は100倍表示)。
各国中央銀行の政策金利の大幅な引き下げ。原油を始めとした資源価格の暴落。
そこで開催されたのが昨年11月に開催されたG20金融サミット。
途上国も含めた首脳が一同に会したうえ、アメリカのブッシュ前大統領の任期もあと2ヶ月を残すのみという設定で、各国の一糸乱れぬ協調体制を築くのは困難であったであろう。
いろいろな評価もあろうが、第1回目としてはまずまずの成果ではなかったろうか。
特に予想外だったのは貿易の保護主義への警鐘が発表されたこと。大恐慌時の教訓が生かされたのであろう。
アメリカのオバマ新政権の政策
過去の政策から見ると、どちらかといえば民主党は保護政策に偏りがち。
日本政府は内政でのもたつきはともかく、対外的にはIMFへの10兆円の資金拠出を始めとして大きなリーダーシップを発揮したのではないだろうか。貿易面でもWTOのドーはラウンド交渉に向けて、大きなリーダーシップを期待したいところだが。
そして、今年の経済情勢だが、結論から言うと今年も厳しい年が続くであろう。希望が持てない結論になってしまったが、ポイントはアメリカと新興国の経済。
アメリカ経済は、住宅価格がいつ下げ止まるのか。
下げ止まる条件としては金融システの復旧が必要条件。
金融市場の崩壊により金融商品の価格付け機能が失われたままでは住宅価格の下げ止まりは見えないであろう。
昨年11月25日FRBによる住宅ローン関連資産8000億ドルの買い取りが発表された。本来は市場に任せるべきものだが、市場が機能していないときには公的資金の投入もやむをえない。
それとともに時代の変化に即した金融市場の再建も必要。CDSなどの新しい金融商品の清算期間も必要であろう。今回の金融危機の原因の一つとして、金融の急速な変化に対して、市場のシステムが付いていけずミスマッチを起こしたことも考えられるのではないか。
もはや公共財とも言える金融システム。この復旧には大胆な政策が必要であろう。
次に新興国
かなりの成長ダウンは避けられないとしても、今後の世界経済は金融システムの復旧まで新興国経済がどれだけ持ちこたえることが出来るか、そこで世界の実体経済へのダメージの大きさも変わってくる。
公共事業による経済成長。先進国への効果は限定的かもしれないが、途上国ではまだ大きな効果があるのではないか。
中国内陸部の開発が進み中央アジアとの交通網が整備されれば世界にとっても大きなメリットになるのではないか。公共投資が社会インフラの整備となって生産性の向上にも結びつく可能性がある。
今年も厳しくかつ不確実性も高い年になりそうだが、より希望を交えて言えば、これを乗り越えることにより新しいパラダイムが待っているような気もする。
開けられてしまったパンドラの箱、しかし最後に残っているのは希望である。
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