2008年度の企業業績見込み【2009年 第 3 回】

【 2009年 第 3 回 】2008年度の企業業績見込み 資産運用

有田 宏(アリタ ヒロシ)⇒プロフィール

 

 

 

2008年度業績予想「日本の時価総額上位10社」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

表は日本の時価総額上位10社 (2009年1月末現在)の2008年度業績予想。推定どおり10社中8社までが減益予想となっている。

①NTTドコモは減収増益。ただし携帯電話の販売方法変更による販売奨励金の減少による費用削減効果があるため割り引いて考える必要がある。

②任天堂は増収減益の予想だが、外貨建資産の評価替え損失を2,000億円見込んでいる。なお、同社の想定為替レートは1ドル90円、1ユーロ120円。

③東京電力の今期は赤字決算となるも、最終損益ベースでは2007年度比で増収と赤字幅縮小。ただし2007年度決算では新潟中部地震による災害特別損失を約1,900億円計上している。この部分を除くと前期は約400億円の黒字となる。

④武田薬品は増収減益。2008年度ではアメリカでの事業再編による分割・子会社化で約2,860億円の研究開発費を計上したため、この費用増加による影響が大きい。

⑤その他は減収減益。特にトヨタ自動車は最終で3,500億円の巨額の赤字。ただし同社の場合2007年度で1兆7、000億円の最終利益を確保しているので今回の経済危機が一過性で終わればダメージはそれほど大きくは無いのだろうが。

今後の各社の業績予想をみる上では、結果の数字だけではなく、その算出過程を吟味する必要がある。
上記のNTTドコモ、任天堂、東京電力、武田薬品ばかりではなく、他の各社も大きく影響を与える特殊要因があるであろう。その部分を考慮に入れた上で企業の成長性を判断する必要がある。

2009年度以降のマクロ経済の予測 3つのポイント

次に投資判断の上で欠かせないのが2009年度以降のマクロ経済の予測。私はポイントとして次の3点を考えている。

①今の経済危機をもたらした金融危機は収束に近づいたわけではなく、まだまだくすぶり続けている状況。特に震源地のアメリカでは財政政策による対症療法ばかりではなく、毀損された金融システムへの根治療法が的確に実行されるかどうか。

厳格な資産査定(ストレス・テスト)、不良資産の買取のためのバッド・バンク構想は必要不可欠と考える。そのうえで、昨年の行き当たりばったりではなく、残すべき金融機関と退出を迫るべき金融機関を的確に選別し、その過程で公的資金で市場の混乱を最小限にするとともに市場の安心感と信頼を得ることが必要。

②実体経済の行方は中国が大きなキーポイントとなるのではないか。成長率の減速はやむを得ないとしても、どの程度で踏みとどまることが出来るか。財政による公共投資は経済インフラの遅れている中国にとり、日本以上に大きな経済効果を発揮する可能性がある。

③世界的な経済減速により、一部で保護主義の動きが見られる。保護主義が強まれば世界経済へ及ぼす災いは計り知れない。今年4月2日にロンドンで開催されるG20は大きな意味を持つのではないか。

 

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