【 2009年 第 7 回 】新興国投資 資産運用
有田 宏(アリタ ヒロシ)⇒プロフィール
世界的経済危機の中で際立つ中国とインドの成長率
上の表とグラフは主要7カ国とBRICs4カ国の2007年と2008年の実質GDPの対前年度変化率、2009年から2014年の実質GDPの対前年度変化率予測。
2009年4月のIMF(International Monetary Fund:国際通貨基金)の発表数字を基に作成しました。
主要7カ国としてG7構成国のアメリカ、日本、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、カナダ。
新興国を代表するBRICs4カ国はブラジル、ロシア、インド、中国。
2007年夏のサブプライム危機から始まった世界的経済危機により、2009年は中国とインドを除きマイナス成長。2010年は日本、フランス、カナダ、ロシア、ブラジルがプラス成長へ復帰。全面的なプラス成長は2011年からとの予測が立てられています。
その後も主要国の成長率は低く新興国側の成長が上回るとの予測。
そのなかでも中国とインドの成長率の高さが際立っています。
新興国特有の投資への注意点
そこで国債分散投資の一環として成長性の低い先進主要国より、新興国への投資を考えておられる方も多いかと思います。
ここで新興国特有の投資への注意点をまとめてみます。
①情報量の少なさ
インターネットが発達した現在、海外の情報もリアルタイムで入手できるようになりました。しかし国内ではなじみの企業が多く、その企業の商品やサービスに触れる機会も多いのに比べ、海外の企業では“マイクロソフト”や“ウォルマート”などの一部の企業に限られています。
新興国となると、なじみの企業としては中国の“レノボ”のパソコンは家電量販店にも並んでいますが後は…。新興国の企業がどのような製品・サービスを提供しているのか?日本では私たちの目に触れる機会はまだ少ないようです。
②政治的リスク
BRICsの4カ国では中国以外は複数政党による民主主義の体制をとっています。
しかし民主主義の歴史はブラジルでは軍事政権から30年、ロシアは共産主義から20年ほどです。政権交代による国内混乱も、タイやイランなどに見られるように、先進国以上に大きくなることが考えられます。
③政府の介入
新興国の場合、政府の経済に与える影響の大きさは先進国に比べて高いようです。
政府の政策如何により投資環境も大きく変わりうることは想定しておくべきでしょう。
新興国に限ったことではありませんが、世界金融危機による一部の保護主義への動きは気がかりです。
新興国投資の場合、個々の企業の詳細を掴むには困難さが付きまとい、一般の個人投資家にとり個別株の投資は難しいかと思います。むしろ国全体の成長に投資すると言うスタンスで、ETFを含めた投資信託という選択肢もあります。
新興国投資でも分散投資を
最後に新興国投資に際しても分散投資の考えは忘れてはなりません。
出来れば新興国でも複数の国に分散することが望ましいです。
世界経済の一体化により、株式と言う資産のみで考えた場合、国際分散の効果は小さくなっています。しかし、その国特有の政治的リスクはある程度回避できると思います。
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