【 2009年 第 9 回 】ETFのみで有効な分散投資は可能か? 資産運用
有田 宏(アリタ ヒロシ)⇒プロフィール
上の表は8月末時点での東京証券取引所、大阪証券取引所に上場しているETFの各指数別分類。前回紹介した原油先物のほかにも環境関連、特定企業グループ、各種貴金属など種類は増えつつあります。そこで日本で上場しているETFのみでポートフォリオを組み立てるとしたら…。
1.ETFのみで造るポートフォリオ
上の表は一例です。国内株式とその他の分野のREITと商品はETFを使うことは可能です。しかし海外資産は株式、債券、通貨ともに新興国を対象とした商品しかありません。特に主要国株式を対象としたETFがぜひ欲しいところですが、現状では国外市場上場のETFか通常の国外株式で運用する通常の投資信託を購入するしか選択肢は有りません。
2.国際分散
尤も、経済のグローバル化が進展した現在では、日本を含めた主要国では景気の方向性は程度の差はあれほぼ一致する傾向が考えられます。80年代以降の日本のバブル経済とバブルの崩壊による金融危機。当時の影響はほぼ日本に限られたものとなりえましたが。
もし今同様なことが日本で起きたとしても、その影響は日本のみではなく世界中に大きな影響を及ぶすのではないでしょうか。したがって各国の株価の連動性が強くなり、株式を国際分散したところで、分散投資によるリスク軽減効果は限られた物になりそうです。
とは言っても、たとえば大規模災害や紛争、あるいは政治の混乱や失政などの市場外の要因による経済への打撃の大きさは、当事国とその他の国では相当違う物となりそうなので、国際分散投資の意味が全く無くなったというものでもありません。
3.資産の分散
次に各資産の分散ということで株式、債券、商品を考えて見ましょう。株式に投資するETFは商品数も多く選択に困ることはないでしょう。商品も金の他にも金以外の貴金属、原油先物、S&P・GSCI指数などを指標とするものが有り、商品相場を対象とするETFは拡充されています。しかし国内債券を対象とするものは有りません。これはあえてETFではなくとも公社債投信あるいは中長期の利付国債で代替すればよいでしょう。
株式と商品の分散効果ですが、最近は株式と商品の値動きが同一方向にぶれる傾向が有ります。マネーが投資先を求めてグローバルに、かつ異種の資産の間を漂流することにより、各資産の間で裁定取引が働き、値動きが均一化されつつあるということなのでしょうか。しかし、今後の経済成長や技術の変化により、長期的には各商品ごとには需要は変化すると思われ、商品投資を分散させる意味はあるでしょう。
債券については、株式との分散効果はまだ健在だと思われます。ただし昨年9月以降のリーマンショックのような市場の大激変には、マネーそのものの大収縮と言うことなり、殆どの資産が殆どの地域で暴落と言うことになり、債券といえども嵐から逃れることは難しいでしょう。
4.安全資産の確保
現状ではETFのみで理想的な分散投資に応じたポートフォリオを作成することは不可能ですが、適時ETF以外の商品を活用することにより、ポートフォリオを低コストで機動性を高いものにすることは可能でしょう。しかし市場の激変時には分散投資とはいっても、それがリスク資産で構成されている限りは分散効果は充分発揮できません。資産の一部は、別途安全で流動性の高い商品で運用しておく必要は有ります。
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