【 2009年 第 10 回 】拡大するユーロ圏 資産運用
有田 宏(アリタ ヒロシ)⇒プロフィール
EU域内のユーロ導入の状況
表は2009年10月現在のEU域内のユーロ導入国。
この他にEU域外で下記の国でユーロが使用されている。
アンドラ、モナコ、サンマリノ、バチカン、モンテネグロ、コソボ(コソボは独立問題でセルビアと係争中)
EU域内でユーロが導入されていないのは下記の国。
イギリス、デンマーク、スェーデン、リトアニア、ラトビア、エストニア、ポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア
このうちイギリス、デンマーク、スェーデンを除く国は将来のユーロ導入を目指しており、国内のインフレ率、財政状況の条件が達成されれば、そう遅くない将来にユーロが導入されるであろう。
ちなみに非EU国のアイスランドは昨年の金融危機により、国家の存立に関わるような大きな影響を受け、EU加盟とユーロ導入も一部では検討されている。現在のようにグローバル化が進展し、資本が一瞬に世界中を駆け巡るような社会では、小国で独自の通貨制度を保つことは困難になってきているのだろう。
EU未加盟国家のうち、いわゆるミニ国家といわれている国も殆どがユーロを導入している。唯一の例外であるリヒテンシュタインの通貨は以前より隣国スイスのスイスフランを使用している。
アイルランドでは10月2日の国民投票で2008年6月に一旦否決されたリスボン条約の批准案が可決され、EUの拡大と強化に弾みがつく形となった。EU圏も今後はトルコ及びバルカン半島の旧ユーゴ諸国への拡大が考えられ、さらにウクライナなどの旧ソ連圏も、ロシアとの対応次第ではより具体的になるのではないだろうか。
通貨としてのユーロの重要性
次に世界に目を転じた場合、通貨としてのユーロの重要性。世界の外貨準備に占めるユーロ建て保有残高比率は1999年のユーロ導入時の18%から2009年6月末には27.5%に上昇(2009年10月3日:日本経済新聞)。
ドル離れが進むと同時にユーロの比率が高まっている。ドルの地位がユーロにとって代られると言う事態は、当面は現実味がないが、ドルを脅かす存在になりつつ事は間違いがないであろう。
経済圏としてのEUおよび通貨としてのユーロの国際的地位は今後も高まっていく。
ただしそれがユーロ高を引き起こすとは断言できない。市場の世界はそんな素朴な物ではない。
ユーロの国際的地位の上昇、そのようなことは既に世界の誰もがわかっていることである。ということは、すでに今の為替相場に反映済みとも言える。
問題は現時点の予測に比べ、将来のユーロの地位上昇の速度が速くなるかそれとも遅くなるか、ではないだろうか。
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