【 2009年 第 5 回】S&P500でみた米国株は、S&P社の評価よりはるかに割安 資産運用
大山 潤(オオヤマ ジュン)
S&P社によるS&P500指数の計算方法に疑問を投げかけた、ペンシルベニア大学・ウォートン校のジェレミー・シーゲル教授のWSJへの投稿(2月25日)、さらにYahoo!への投稿(4月8日)が、少し前に話題となりました。
S&P500指数のパフォーマンス算出
S&P500指数のパフォーマンス算出時に、個別銘柄に対しては時価総額による重み付けをしている一方で、指数の総利益算出にはその方法を使っていないのは間違いではないか?というのがシーゲル教授の指摘です。
AIGのような時価総額の小さな企業が生み出した巨額の損失が、その20倍の時価総額であるエクソンモービルの計上した利益を掻き消してしまう(同等な価値で単純に足し算される)のは、指数の価格付けに歪みを与えのことになるとのこと。
指数の算出方法の違い
この歪みについて、おなじくAIGとエクソンモービルを使い、S&P500のような指数を持つ投資家のポートフォリオに例えて、以下のように解説しています。
このような指数を保有する投資家のポートフォリオは、例えばエクソンモービル95%とAIG5%で構成されることになります。
・ポートフォリオの時価総額 = 3550億ドル(エクソンモービル3500億ドル+AIG 50億ドル)
・S&P社が主張するポートフォリオの総利益 = ▲540億ドル( エクソンモービル450億ドル+AIG ▲990億ドル)
・シーゲル教授の計算による総利益 = 39億ドル(450億ドル×0.95+▲990億ドル×0.05)
利益の何倍の価格がついているかを示す、株価収益率(PER)を計算してみます。
・S&Pの計算方法によるPERは、3350億ドル÷▲540億ドルで、無限大となり
・シーゲル教授の計算方法によるPERは、約9倍となります。
この算出方法の違いを実際のS&P500指数で比較すると、2008年S&P社がレポートしたS&P500の総利益は14.97ドルに対して、時価総額の重みを加えた総利益は71.50ドルとなり、PERは、S&Pのレポートした53.3倍に対して、11倍となります。
歴史的な基準でもかなり割安
実際の市場の評価は、S&Pのレポートが示唆するほど酷いものではなく、利益対しても時価総額の重み付けをすれば、歴史的な基準からいってかなり割安だろう、というのがシーゲル教授の結論です。
米国の株式市場の割安・割高、あるいは”底”に関する議論はともかく、現在のような、例えば各企業が巨額の赤字を計上するような経済状況においては、指数の計算方法によってまったく異なった答えが算出されてしまうということです。
指数を利用する立場の一人として、どのような方法で算出されるのか、利用する上でのメリットとデメリットは何かを、あらためて考えさせてくれる議論です。
WSJ OPINION:http://online.wsj.com/article/SB123552586347065675.html
Yahoo! Personal Finance:http://finance.yahoo.com/expert/article/futureinvest/153794
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