【 2009年 第 6 回】金のATMがドイツに登場 資産運用
大山 潤(オオヤマ ジュン)
アメリカの政策金利
米政策金利は、昨年12月より0.25%に据え置かれているにもかかわらず、長期金利は10年国債で2%強からじわじわと上昇し、現在では3.5%に届こうかとしています。おもに金融危機対策資金の調達で急激に膨らんだ債券発行額を、マーケットが吸収できていない(投資家が買ってくれない)状況の表れでしょう。
このような米国債のマーケットへの大量投入による債権価格の崩壊と金利の上昇は、連邦準備理事会の債券買い入れのアナウンスでも止めることができませんでした。少なくとも、ここ数日の金利上昇と債券価格の下落はそれを示しています。
FOMC側としては結局のところ、長期国債を買い続けます、購入額を増やしますというメッセージを発し、それを実行して見せることでしか、この動きを抑えることはできないのかもしれません。
特に海外の投資家に対しては、「金利を上げるから国債を買ってください」というメッセージが有効でしょうが、悪化し続ける失業率、住宅ローン延滞率、カードローン延滞率などを考えても、これを実行するのは相当困難に思われます。
債券価格と米ドルの下落
5月21日に、Moody’s が英国債格下げの可能性を示唆すると共に、US国債のクレジットに対する深刻な疑問を呈したこと、また6月頭に控えるGMの破綻(?)処理などもこうした動きに拍車をかけ、債券価格そして米ドルの下落に追い打ちをかけました。
このような米国債また米ドルに対する不安また購買力の低下は、金価格の動向にも表れています。今年2月に1,000ドルを付けた金価格は、再び1,000ドル近辺まで上昇してきています。もちろん米ドルの購買力の低下は、景気悪化にともなう需要の減退に関わらず、金だけでなくその他の商品価格を相対的に上昇させることにもつながります。
金のATM
さてタイトルの、金のATMについてですが、「ドイツ、スイス、そしてオーストリアに500台の金のATM設置を計画しているドイツの資産運用会社が、フランクフルとの主要鉄道駅においてマーケッティングテストを行った。」とロイターが報じました。
このATMは、それぞれのATMに1,500ピースの金が入っていて、クルーガー金貨のように、1グラム、5グラム、10グラムの金を販売することができるそうです。この会社によれば、ドイツの一般投資家はまだ実物の金投資に熱心ではないが、最近は6週間ごとに倍になるペースで問い合わせが急増しているとのことです。
現物の金をATMで買うことができるという発想、そして現在のマーケットの環境は、このビジネスを後押ししているように思えますが、このATMに取り付け騒ぎのように人が群がるような事態は起きてほしくないものです。
REUTERS INDIA:http://in.reuters.com/article/fundsNews/idINLJ42229420090519?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0&sp=true
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