【 2009年 第 7 回】世界規模の高齢化危機 資産運用
大山 潤(オオヤマ ジュン)
世界の人口の動向は、特に長期の投資判断や資産配分を考える上で、把握しておいた方がよい情報です。例えば人口は、消費者の数(マーケットの規模)あるいは労働力(生産力)として、国力を探る要因の一つとなるからです。もちろん国毎の購買力や生産性、そして人口の構成といった、その中身にも着目する必要があります。
今回紹介するエコノミスト誌の特別レポートでは、金融危機(financial crisis)ではなく人口の動向、さらに高齢の危機(old-age crisis)に着目しています。
金融危機関連支出と高齢化関連支出
以下の図1は、「先進国における現在の金融危機関連支出と2050年までの高齢化関連支出の財政赤字のGDP比を現在価値で示しています。IMFは6月に、2008年から2009年におけるG20先進国の財政バランスは、GDP比8%の割合で悪化すると試算しています。
IMFは、金融危機のコストを巨額支出と表現する一方で、長期で見た高齢化関連支出が、こうしたコストを小さく見せるだろうとも述べています。
現在から2050年までの予測では、先進国における金融危機に対する財政負担は、高齢化関連コストの10%に過ぎず、残りの90%は年金、医療、長期間の介護の追加支出になるだろうとのことです。
先進国と途上国の高齢化動向
以下の図2は、世界の60歳以上の人口の推移と全人口に占める割合(縦軸)の推移です。網掛け部分は予測(FORCAST)濃い線が先進国、薄い線が途上国を示しています。
こうした高齢化の傾向は、豊かな世界ほど進行が早く、数十年遅れて貧しい世界が後に続くとみられています。UN(国連)の隔年人口予測は、全世界の年齢の中央値は、現在の29歳から2050年には38歳へ達し、現在世界人口11%未満である60歳以上の人口は、中央予測では2050年に22%まで上昇すると予測しています。
また先進国における60歳以上の人口は33%に達し、3人に一人が年金を受給し、10人に一人が80歳を越えると予測しています。
高齢化の各国の状況
最後に記事を参考に、各国の高齢化の状況を箇条書きにします。
・ アジアの豊かな国、日本、韓国、台湾は既に高齢社会であり、さらに急激に高齢化が進行。
・ ドイツ、イタリア、スペインでは核家族化が進み、高齢化のスピードが速い。
・ フランス、英国、多くの北欧諸国は子供の数が多く若さを保っている。
・ 東欧、特にロシア、出生率が低く、寿命も低迷している。
・ アメリカは出生率の反発と高い移民政策により、今世紀半ばまで若さを保つ。
・ 途上国の中でも中国は、既に高齢化が急速に進行している。人口は2030年に約14.6億人でピークを打ち、その後緩やかに減少する。
特に貧しい国々に関しては、
・ ほとんどの発展途上国は高齢化について心配していない。出生率は低下しているが、人口はまだ若く、数十年は若さを保つ。
・ HIV/AIDSは多くの働き盛りの大人の命を奪っている。
・ 長期的には豊かな世界と同様、少子化と寿命の延びが、貧しい国でも高齢化を引き起こす。
・ 高齢化の進行を待たずに、単にこれらの国の人口の多さ、高齢の人口の多さが不安を増大する。既に4.9億人の60歳以上の人口を抱え、その人口は2050年までに3倍になる。
・ ほとんどの国が、国が資金を提供する生活保護ネットを持たないため、その数の人々を管理するのは困難。
ECONOMIST.COM:http://www.economist.com/specialreports/displayStory.cfm?story_id=13888045
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