【 2009年 第 7 回】縄文杉とタネマフタ エコライフ
江口 久美子(エグチ クミコ)
ここ数年人気を集めている、エコツアー。
エコツアーというと、自然を観光することを想像する方は多いと思いますが、実はもう少し深い意味があります。
エコツアーでは、自然を見て楽しむだけでなく、そこに生きている動植物の生態や人と自然の関わりや現地の人々の生活や文化などできるだけ多くのことを体験して学びます。
そして、エコツアーに参加する場合は、現地の自然や文化の保護を意識して、住んでいる人々に対する配慮と尊敬の気持ちを持って接することが大切です。
一番人気は縄文杉を見に行くツアー
私の住む鹿児島県にある屋久島には、たくさんのエコツアーがあります。
海ガメの産卵を見るツアー、もののけ姫で有名な白谷雲水峡へのツアー、そしてやはり一番人気は縄文杉を見に行くツアーです。
「縄文杉を見たら人生観が変わる」という人もいるので、大きな期待を胸に私も縄文杉を見に行ってきました。登山届けを提出して、朝6時半に往復22キロの旅がスタート。
山歩きは全くの初心者なので、長いトロッコ道に途中うんざりするかと思っていましたが、森の中には今まで見たことのない植物がたくさんあって楽しく登ることができました。
4時間半かけてやっと縄文杉に到着。推定樹齢が約2700年と言われているこの杉の迫力は想像以上のもので、やっと辿り着いた達成感もあってかなんとも言えない気持ちになりました。
ただ少し残念だったのは、縄文杉を触れるくらい近くで見ることができなかったこと。
これは、土の養分や水分を吸収するための根が観光客によって踏まれて痛んでしまったため、縄文杉の周りに柵が張られているからです。
エコツアーは自然を保護することが大前提なのですが、皮肉にも逆の結果になってしまっていました。
屋久島の「縄文杉」とニュージーランドの「タネマフタ」が姉妹木に
その縄文杉に、2009年4月23日、姉妹木ができました。ニュージーランド北部のワイポア森林保護区にある「タネマフタ」という木です。推定樹齢は、1250年から2500年ほどと言われています。
遠く離れたこの2つの木がなぜ姉妹木になったのでしょうか。
数年前、屋久島とワイポウアの森が似ていることに気づいたニュージーランド政府観光局の発案で、ワイポウアの森の先住民が屋久島を訪れましたことがきっかけとなりました。
ワイポウア森の先住民は、屋久島の森を歩いて地元の人々と交流し、2つの森に共通点が多いことを見出します。その後は、毎年双方で行き来するようになり、ますます2つの森の類似性が認識されるようになりました。
また、森の類似性だけでなく、それぞれの地元の人々や関係機関が自然を守ろうとしている姿勢や、自然との共存、森の再生の歴史などにたくさんの共通点が見つかりました。
そこで、この関係をよい方向に進展させようと「古代木ファミリー・プロジェクト」をスタートさせることになりました。
この「古代木ファミリー・プロジェクト」の主な目的は4つあります。
●自然環境保全の重要性の認識向上
●観光と環境の共存
●文化・学生・ガイドの交流促進
●博物館の交流
まさにエコツアーの特徴と言えるものばかりですね。世界にも例を見ない、樹齢1000年を越す巨木同士の今回の姉妹木締結を機に、屋久島の縄文杉もニュージーランドのタネマフタも今まで以上にエコツーリストがふえることでしょう。
エコツーリストとして参加する私たちは、これからはもっともっと自然の保護を意識して、何十年後も今と変わらない自然を残していきたいものですね。
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