【 2009年 第 7 回 】海外旅行先で歯の治療を受けたら 歯を大切にする
福島 久美子(フクシマ クミコ)⇒プロフィール
海外の歯の治療費は高い
日本に比べ海外の医療費は高いというイメージがありますが、歯の治療費も、日本の5倍も10倍もかかることがあるようです。
旅行中の急な歯の痛みも、できれば日本に帰ってから治療したいところですが、どうしても我慢できないという緊急時には意を決して現地の歯医者さんにかかることになります。
そこで待っているのが、高額な治療費の支払い。例えば神経をとり歯を削って詰め物をした場合、日本では保険適用で数千円程度で済むものが、アメリカでは10万円を超えると言われます。
とりあえずは一旦窓口で全額を支払わなくてはなりませんが、その際、必要書類に記入してもらい、日本に帰って申請すれば、日本の健康保険から自己負担分(3割など)を超えた分が戻ってくるケースがあります。この制度を海外療養費制度と言います。
対象となるのは、虫歯を削って銀の詰め物をしたり歯を抜いた場合など、日本で保険適用となっている治療のみ。歯の治療が目的で渡航する場合や、セラミックなど高級素材を使った治療やホワイトニングなどの審美目的では対象となりません。
以下の様に手続きします。
現地の歯医者さんで
治療した内容とかかった費用を書類に記入してもらいます。
・ 診療内容明細書
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/kokuho/iryo/care.html
・ 領収明細書(サンプルはこちら↓)
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/kokuho/iryo/care.files/0018_20210222.pdf
明細書用紙は国民健康保険加入の人はお住まいの市区町村の役所から、会社員の人は健康保険組合から事前に入手しておき、旅行の際持って行きます(明細書サンプルは横浜市のもの)。
帰国したら
現地で記入してもらった「診療内容明細書」「領収明細書」にそれぞれ翻訳文をつけ、療養費支給申請書、治療費の領収証、保険証、印鑑、銀行の振込口座番号などとともに国民健康保険の人は市区町村の役所の健康保健課窓口、会社員の人は健康保険組合に提出します。
翻訳は自分でつけても良いし、人に頼んでもOKです。また、日系のクリニックにかかり、日本語で書いてもらえれば翻訳は不要です。
請求できる期間は治療費を支払った日の翌日から起算して2年間です。
いくら払い戻される?
払い戻されるのは、日本で同様の治療をしたと想定して決められる標準保険診療費(標準額)の自己負担分を超えた額です。支給額は、支給決定日の外国為替レート(売レート)が用いられ、申請から2ヶ月程度で払い戻されます。
(日本で3割負担の一般被保険者の例)
現地で10万円支払い、日本での標準額が2万円の場合
自己負担分 = 2万円x3割=6,000円 ①
払い戻される額: 2万円-①=1万4,000円(戻り率14%)
現地で1万円支払い、日本での標準額が2万円の場合
自己負担分 = 1万円x3割=3,000円 ②
払い戻される額:1万円-②=7,000円(戻り率70%)
注意すべきは、あくまでも国内基準をベースに計算されるのであって、支払った全額を対象として計算される訳ではないということ。
上記の例から、現地で治療費がいくらかかったとしても、日本での標準額によって、支払った治療費に対する払い戻し額の割合(戻り率)が違ってくる、ということが分かりますね。
まとめ
この海外療養費制度は、手続が少々煩雑なことや払い戻しまでに時間がかかることなど、決して使い勝手が良いと言えない面もあります。
しかし、民間の海外旅行保険では、ごく一部の保険を除き、短期旅行中の歯の治療費についてはカバーされないのが一般的であることを考えると、この公的制度を使って少しでも取り戻せるのならば使わない手はない、と思います。
もっとも、出発前に日本で歯を治しておけば、その必要もないのですけどね。
以上
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