【 2009年 第 3 回 】長期的視点で考えてみる(1) 長期的視点
恩田 雅之(オンダ マサユキ)⇒プロフィール
ひとつの時代の終わり
米国フォードが1908年に800ドルでT型フォードを発売、生産技術の向上により1913年には350ドルになり自動車の普及が始まりました。
フォードは、単一車種を大量生産することでコストを下げて一般大衆が自動車を購入できるようにしました。
一方のGMは、当時乱立していた自動車メーカーを統合することにより大きく成長しました。
この時、採用したのが事業部制です。キャデラック、シボレー、サターン、GMC、ポンティアックなどがそれにあたり、全方位の顧客に対して商品の品揃えをする体制でフォードに対抗しました。
結果は全方位の顧客に対応したマーケティングを展開したGMが販売台数で勝り、昨年トヨタに抜かれるまではNO1の販売台数を続けていました。
そんな中、GM傘下のサーブの破綻やGM本体の事業部数削減を検討しているというニュースがあり、ひとつの時代1つの仕組みの終りを感じました。
ビジネスモデルのシフト
サブ・プライムローンの問題から発展した、金融危機や実体経済の悪化により企業は、富裕層を相手にしたビジネスモデルから新興国の一般人々を相手にしたビジネスモデルへのシフトを模索しています。
2月12日の日経新聞に「YKKが従来の品質基準を見直して、価格を半分に抑えたファスナーを新興国向けにARCとブランドで販売するという特集記事か載っていました。その記事の中で印象に残った言葉が「過剰品質」という言葉です。
また、その記事には、インド政府が学生向けに20ドルのノートPCの生産を計画していることにもふれていました。
富裕層から新興国の一般の人々へとビジネスする相手がかわり、多機能、高品質が付加価値を生む時代から、少機能、中品質で新興国の人々が購入できる価格帯のものを生産できることが付加価値を生む時代になってきているようです。
インドのタタ自動車は「ナノ」という超低価格なクルマの販売を発表しています。
100年前にフォードがT型フォードを発売し、5年後の価格を半分以下に抑えたモデルを売り出しアメリカの大衆に車が行渡ったように、「ナノ」や「20ドルPC」が新興国で急速に普及するかも知れません。
機能を絞った超低価格ブランドの開発
今回の金融危機や経済の混乱の後には、機能を絞った超低価格のものがいろいろ開発されそうな気がします。
その時に備えて、日ごろから「自分にとって必要な機能は何か」を探求しつづけることが生活者として日常の満足度を上げるために重要になるのではないかと思います。
YKKのようにトヨタ自動車がレクサスブランドとは、正反対の新興国向け超低価格ブランドを作るかどうか興味を持って今後の展開をみていきたいと思っています。
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