【 2009年 第 5 回 】長期的視点で考えてみる(2) 長期的視点
恩田 雅之(オンダ マサユキ)⇒プロフィール
米国の公的資金の注入
タイトルバックでも触れましたが、大手5行が今年の1-3月期で黒字を確保しました。しかし、貸倒引当金を積み増す銀行が多く実体経済の悪さも意識される決算内容でした。
GSのCEOは、50億ドルの増資をすることで、早期に公的資金100億ドルを返還したいとコメントしていました。
また、AIGが公的資金をボーナス支給に使ったことにより、米国政府が公的資金の注入を受けた金融機関が役員や従業員の報酬に対して制限を設けたことへの不満と優秀な人材確保への不安についてもコメントしていました。
公的資金の注入を受けなかった銀行は、役員や従業員の報酬について自由に決めることができ、そのような金融機関に、優秀な人材を獲られてしまう危機感がGSのCEOのコメントから伝わってきました。
米国政府や米国民から批判されても優秀な人材を獲得するには、それ相応の報酬を支払う必要があり、GSが将来に向けて競争力を維持向上するためには、増資を行ってでも早期に公的資金を返還し、健全行になり、優秀な人材を獲得していくという強い意思を感じました。
ゆとり教育からの転換
同じ時期に日本では、小中学校で全国学力テストが実施されました。
日本の教育は、ゆとり教育から180度転換し、小中学校で学ぶ基礎学力の向上を目指し、その成果をみる「ものさし」という役目をするテストが全国学力テストになります。
産業構造が進化し、グローバルな競争がますます活発になっていく時代、日本にとってもいろいろな分野で、優秀な人材がますます必要になってきています。基礎学力を強化、向上されることは時代のニーズに合った必要な政策だと思います。
報酬という評価の入口部分と出口部分
GSの人材獲得と日本の全国学力テストについて考えてみますと、日本の場合は、小中学校の基礎学力向上を目指した政策を進めています。これを、入口部分に当たるかと思います。GSの場合は、教育成果を報酬という形で評価する出口部分に当たるかと思います。
日本は、入口部分を強化(ゆとり教育からの転換)する政策を進めていますが、出口の部分の成果に対する報酬部分についてあまり関心がないような気がします。
逆に、GSなどの米国の金融機関は、今回の金融危機で強欲資本主義と批判されながらも、高い報酬により世界中から優秀な人材を獲得する姿勢を崩しておらず、出口部分にフォーカスしているように感じます。
資本主義は、ある成果に対して相応の報酬が支払われることで、技術が進歩し生活が豊かになってきました。
行き過ぎて強欲になってしまうのは問題ですが、成果と報酬のバランスについて改めて考える機会を与えてくれた、2つのニュースでした。
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