【 2009年 第 2 回 】年金に頼りがいはある? 社会保険
菅野 美和子(スガノ ミワコ)⇒プロフィール
ねんきん特別便の年金見込額にがっかり
最近の年金問題に、春子さん夫婦も気になって、ねんきん特別便が届くとすぐに記録を確認しました。記録に間違いはありませんでしたが、年金見込額を聞いてがっかりしました。
ずっとサラリーマンを続けてきた夫の年金は、65歳から月に17万円程度です。春子さん自身の年金は65歳から月に5万円程度です。2人合わせて22万円程度の年金でどうして生活していこうと、50歳代の春子さん夫婦は心配になっています。
社会人になった娘から、学生時代に納付しなかった国民年金の保険料はどうしたらいいだろうと相談がありましたが、「あてにならないわよ。自分で貯蓄したほうがマシよ」と春子さんは答えました。
年金は老後ばかりではない
そんなある日、夫の友人が突然亡くなりました。夫を亡くした妻は、子どもを抱えて途方に暮れていました。夫の死亡という悲しみとこれからのお金の心配が同時にやってきました。
しかし、そのようなつらい状況の中で、遺族年金をもらえることがわかりました。年間で150万円ほどの遺族年金です。これですべてをまかなえるわけではありませんが、確実に入ってくる年金は生活の支えとなります。
友人のことがあって、春子さん夫婦は「年金は老後ばかりではないのだ」と気がつきました。
「考えてみれば、自分たちも親に仕送りしていないよ。もし、親に年金がなかったら、仕送りしないといけないんだな」と夫が言いました。
「それに僕たちが老後を迎えたとき、子どもたちが仕送りしてくれるとも思えないな」「そうね。貯蓄を取り崩して行くだけの生活だと、いつかお金が底をつくわ。いつまでも生活を支えてくれるのが年金なのでしょうね」と春子さんは考えます。
生きている限り受けとれる公的年金
毎月貯蓄をして、老後に備えるのも大切です。しかし長生きすれば、いずれ貯蓄はなくなります。生きている限り受けることのできるのが公的年金です。そして、死亡や障害にも保障があります。
また、公的年金は物価が上がれば年金も上がるしくみになっています。マクロ経済スライドの導入で複雑になりましたが、基本的には物価の上昇に対応するしくみです。これは民間の個人年金にはないメリットです。「私たちが払ってきた保険料にも意味があるのね」と春子さん。
年金制度をわかりやすい公平な制度にしていくなどの改革は必要ですが、やはり老後や万が一の場合、生活のベースとなるのが公的年金です。
「もっと頼りがいがあると安心できるのにね」と春子さんは言います。そんな春子さんに「僕と年金、頼りがいがあるのはどっち?」と夫が聞きます。しばらく考えた春子さんはにっこり笑って言いました。「もちろん、あなたよ」
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