【 2009年 第 3 回 】自分のために、家族のために 社会保険
菅野 美和子(スガノ ミワコ)⇒プロフィール
家庭内の思わぬ事態
今日は息子の20歳の誕生日です。家族で食卓を囲みながら、弥生さんは、こんな日が来てよかったなと胸がいっぱいです。
実は、息子が学校へも行けない、仕事もできないという状態が続いていたのです。スポーツ好きの息子は、楽しく大学生活を送っているようにみえましたが、人間関係のトラブルから、学校に行けなくなり、そして動けなくなってしまいました。
夫の退職が近づき、いよいよ年金暮らしという時期でした。教育費もあと少し、子どもが独立すれば、夫婦ふたりで暮らすという定年後のプランをたてていました。なんとか暮らしていけるプランでしたら、思いがけない事態に心は痛み、経済的な負担もだんだんと心配になってきました。
関係ないと思っていたニート
「面倒みてあげたくても、一生、弟の生活は支えられないよ。私たち、ニートには関係ないと思っていたのに…」と社会人の娘が言います。
ニートとは、一般的には「学校に行っていない、働いてもいない、働くための訓練も受けていない15歳から35歳未満の若者」を意味し、社会問題にもなりました。なぜ、動けないのか、原因はさまざまでしょう。
弥生さんにも原因はわかりませんでしたが、目の前の息子に、不安で一杯でした。リタイアを決めていた夫は再就職。そのうち、いろいろと無理が重なり、体調をくずして入院しました。
ところが、その父親の入院がきっかけで、息子が再び、動き始めたのです。父親には無理させられないと、アルバイトを始めるようになり、仕事を通じて、しだいに元気を取り戻していきました。夫の入院に弥生さんは心配が募りましたが、息子が動き出したことは何よりの救いでした。まもなく、夫は退院。また家族が揃いました。
「これからは年金をもらいながら、無理しないように、仕事をするよ」という夫の言葉に、弥生さんもそうしてほしいと思います。
「自分の年金を用意するということは、家族にも迷惑をかけないということだったな」と夫が言います。
「お父さんは、今まで準備をしてきたから年金をもらえるのね」と娘が言います。
大学生の学生納付特例制度
年金という言葉で、弥生さんは、20歳になった息子に届いた年金手帳を渡しました。弥生さんは調べていたことを息子に伝えました。保険料が払えない場合は、大学生であれば学生納付特例制度、学生以外の30歳未満の若者であれば若年者納付猶予制度が利用できると。
家族の話を聞いていた息子は言いました。「アルバイト代の中から、保険料を払うかな」
弥生さんの息子は動き始めましたが、家族のうち誰かが病気などで動けなくなると、家族全体の経済的な負担も発生します。
国民年金は強制加入ですが、強制だからしかたないと考えるのではなく、自分のため、そして家族のためにも準備をしておくのだと考えてみてはどうでしょうか。
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