【 2009年 第 11 回】成年後見を活用しよう トピックス
當舎 緑 (トウシャ ミドリ)⇒プロフィール
成年後見って面倒?
成年後見制度は、平成12年度から施行されていますが、高齢化がどんどん進む中、思ったよりも利用が伸びていません。
これは、制度を利用するために、医師の診断書が必要だったり、何より家庭裁判所に申請をしなくてはならないといけない、敷居の高さにあるのかもしれません。
確かに、手続など、面倒な要件が色々あるのは事実ですが、利用していてよかったと思える場面があるのも事実なのです。
今回は、制度を利用するのにあたって、間違いやすい事項について誤解を正していきたいと思います。
成年後見を使えば、親の財産を自由に使える?
親族が、本人より先に成年後見制度の話を聞きに来る場合、ちょっとした思惑があることもあります。
自分の持っているお金だけでは、生活が厳しいので、ちょっと本人の持っている資産をあてにしたいというような思いです。
では、そういう考え方で成年後見制度を使えるのかというと、それは断じて許されません。
成年後見は、あくまでも本人が幸せに一生を暮らすためのお手伝いなのです。
財産に関しては、毎年家庭裁判所に報告が義務付けられています。
このような説明をすると、たいていの親族は、「じゃあいいです。」とおっしゃって、帰ってしまわれるのは非常に残念です。
成年後見制度が役に立つ事例
成年後見は、判断能力が衰えた時にだけ利用するわけではありませんので、二つの制度が規定されています。
「法定後見制度」と「任意後見制度」です。
法定後見は判断能力が衰えてきた時に、契約関係に同意や取り消しができますので、高齢者の財産を狙う悪徳業者から身を守るのに役立ちます。
ただ、どこで判断能力が衰えたのか、明確な線引きをすることは非常に困難です。
そういう場合に、使える制度が、「任意後見制度」です。
任意後見制度は、まだ自分がしっかりしている時に、判断能力に衰えが出てきて、自分の意思がはっきりと表明できなくなるときに備えて、こんな暮らしをしたいという希望を「契約」として残すことが出来ます。
任意後見では、できるだけ自分のことは自分でするように頑張ってはみるけれど、それでも判断能力が衰えたというような場合、契約関係や財産を任せる契約に移行するという、「移行型」という契約を結んでおき、法定後見制度にスムーズに橋渡しできるようにしておくのです。
認知症などが発症した場合、「法定後見」の申し立てが出来るのは、市町村や4親等以内の親族などと限られていますが、日常接していない方が、「判断能力がどれだけ衰えているか」判断するのは難しいものです。
出来れば、あらかじめ「任意後見」契約を結んでおくことが望まれるでしょう。
第3者には限界がある
結婚しない独身者、結婚しても子供のいない夫婦、事実婚の夫婦など、何かあった時に、他人に頼ることも多い世の中になってきているのに、基本的に手続などは、「他人」ではできません。
兄弟が病院に入院して、保険金を請求しようと思っても、手続はご本人がしてくださいと、保険会社に言われたことのある方は多いはずです。
保険金は、受取人でなければ、「指定受取制度」であらかじめ第3者を指定するなどしていなければ、請求できないというのは、なんとも不便なことではないでしょうか。
不便な世の中だからこそ、自分に何かあった時も考えておいて、出来るだけ、周りの人に迷惑をかけないという意味で「成年後見制度」は有効な活用法と言えるのです。
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