【 2009年 第10回】リタイア後のお金の問題 その2 リタイア準備
西谷 由美子⇒プロフィール
つい先日、誰もいない部屋で一人、ゆったりと「おくりびと」をTV鑑賞することができました。
各国の映画賞を総舐めにしただけあって、美しい自然、家族の愛情、日本古来の習慣である故人を丁重に彼岸へとお送りする習慣等々。個人的に興味のある場面が多く、引き込まれるように最後まで見てしまいました。
お葬式料金の相場
身近な人を亡くした経験があれば誰もが、「そうそう、そこではこうするんだ」、「この辺の習慣では順番が違う」等と、お弔いの作法というものを思い出したのではないでしょうか?ついでに言えば、大抵の場合は納棺士ではなく、葬儀社の方があの映画の様な事をしてくださっているのですが。
人生で何度か遭遇する可能性はあっても、自分が取り仕切ることはめったにない「お葬式」。従来は言い値で不明朗な会計という有難くないレッテルが貼られることが多かったのですが、最近は「リーズナブルな葬儀料金」を掲げて営業する葬儀社が首都圏を中心に増加している、と夜中のTV番組で特集が組まれておりました。お読みになられている皆様は、お葬式料金の相場というものをご存知でしょうか?
日本消費者協会の2007年調査によると、葬儀にかかる平均的費用は総額231万円。その内訳は葬儀費用が約141万円。寺院への費用が約50万円。飲食接待にかかる費用が約40万円との事。もちろん家族だけの小規模なものから、何百人も参列者がいらっしゃる大規模なものまで全部の平均ではありますが、結構な金額ですよね。終身保険が「お葬式の準備」として200万円口の加入を薦めているのもうなずけます。
寺院への費用は葬儀を執り行ってもらう場合のお布施が30万円、戒名料が20万円だそうです。先月に書きました無宗教の霊園では、生前の名前のままでも埋葬が可能ですので、戒名にかかる費用は絶対ではないかもしれません。また、特定の宗教を信仰していない方の場合、お葬式のためだけに葬儀社から僧侶を紹介していただいてお経を上げていただくという方法もあるそうで、稲城市の「おぼうさんどっとこむ」は専門に僧侶派遣業務を行っているそうです。
増える直葬
地方出身者が集まっていて、特定のお寺の檀家でない事が多い首都圏では、「直葬」という従来にないスタイルが、既に4割近くに達するそうです。ご自宅や葬儀場で通夜・告別式を行うのではなく、例えば病院でお亡くなりになった場合、病院から直接火葬場へご遺体をお運びしてそこで一切を執り行う、というもの。濃密な地縁・血縁とは縁遠い都会で時間も限られている場合には、ご家族の了承のもと、従来のしきたりにとらわれる必要はないのかもしれませんね。
私は田舎育ちですが、常々「お葬式での不手際を責めてはいけない。なぜなら、別れは突然やって来るもので、誰もが満足な準備をせずに臨むのだから。」と諭されて育ちました。でも子供のころから家族や親戚のお別れを何度も経験する中で、自然と伝統や習慣を学ぶ機会があった訳です。
核家族化が進み、近隣とのお付き合いもそれなりの現代では、めったに最後の別れを経験する場はありませんね。今月も、あまり考えたくはないかもしれませんが、リタイア準備のひとつとして(特に菩提寺などがない方)、どのようなスタイルで見送ってもらいたいかも考え、ご家族にお伝えされてはいかがでしょう。ある程度形が定まってくれば、それにかかる費用をいくら、そしてどのようにして準備するのかも見えてくるはずです。
残されたご家族に大きすぎる負担を残さない、これもリタイア準備に必要な事の一つではないでしょうか?とはいえ、まだまだ長生きする予定ですから、かなり先のことではありますが。
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