【 2009年 第 8 回 】金銭教育その14 若者の消費者トラブル~未成年者契約の取消し~ こどもとお金
高原 育代(タカハラ ヤスヨ)⇒プロフィール
2009年4月より、京都府金融広報アドバイザーとして活動を始めています。
先日、お隣の滋賀県の金融広報アドバイザー協議会に参加し、弁護士の土井裕明先生の講演「若者の消費者トラブルの現状~学校における金銭教育を考える」を拝聴しました。
この講演での「若者」というのは20代~30代前半を対象としたお話でしたが、数年後には社会に出ていく中高生を持つ母親として、私自身、大変関心の高いテーマであり、また実際にたくさんのことを学ばせていただきました。
契約当事者(すでに契約をしてしまった人)からの相談件数が、ある年齢を境にして急増するという現実にビックリ。さらに、その裏の理由を聞いてまたビックリ…。
相談件数が急増する年齢は
たとえば、鳥取県生活環境部くらしの安心局消費生活センターのHPに、年齢別(18~22歳)相談件数の比較グラフをご紹介しましょう。さて、18~22歳の中で急増するのは何歳だと思いますか?
答えは、20歳。
18歳では76件、19歳では74件であるものが、20歳ではなんと385件に急増!
そして21歳では169件、22歳では144件という風に少し減っています。
ネット上で見やすいデータを公開している消費生活センターの例として鳥取県を例に挙げましたが、これは全国的な傾向なのです。
土井先生から頂いた資料には全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO-NET)に登録されたデータのグラフが掲載されていたのですが、こちらの2007年のデータでも、18歳では6557件、19歳では7935件であるものが、やはり20歳になると約2.5倍に急増して18215件となっています!
なぜ20歳?
でも、なぜ「20歳」なのでしょうか?
その理由は、20歳までの未成年がする契約については、『民法』で保護されているからなのです。民法第4条で「年齢二十歳をもって、成年とする」と規定されています。
「成年」つまり大人になると、すべて自己責任を問われることになります。
しかし、「未成年者」のようなまだ判断能力が不十分な者に対してまでそれを求めるのはかわいそうだということから、未成年者が法定代理人(通常は親)の同意を得ないでした契約については、一定の例外はあるものの「契約取消し可能」という未成年者を保護する規定がなされているのです。
このため、契約の相手方、とくに最初から相手を騙してやろうというような悪質な業者にとっては未成年を相手にしても“うまみ”が少ないといったところなのでしょう。
その分、「20歳」になるのを待ちかまえて勧誘する業者もいるのだそうで、それが20歳になると相談件数が急増するという、実際のデータとなって表れているわけです。
19歳から20歳になったからといって、子ども達の知識や社会経験、判断力といったものが、急に備わるわけではありません。
親としては、それまでの期間になんとかして「自分の身を守る力」をつけさせていかなければならないことを迫られていると実感しました。
こういった力は、一朝一夕に身につけられるものではありませんから、やはり日頃からの親子のコミュニケーション等の中で地道に伝えていくしかないでしょう。
相談できる大人の存在
その一方で、もしも、未成年の間にトラブルに巻き込まれてしまった場合には、親をはじめ、身の回りの信頼できる大人に相談すればよいのだということを伝えておくことが重要です。
子どもは成長するにつれて、親から離れていくもので、友達や仲間を相談相手とすることが多くなります。
が、「本当に困ったときは相談してね」と言える親子関係を作っておきたいものだと思います。
そして、子どもから相談を受けたときには、あわてないでどう対処すればいいのかを知っている親になっておきたいものです。
国民生活センターのHPには、この他にも子どもの消費者トラブルの最近の事例が掲載されているのでご覧になってみてはいかがでしょうか。
国民生活センター 子どもの消費者トラブル(最近の事例)
一例として、「未成年者がキャッチセールスで購入させられた美顔器と化粧品」の相談事例が掲載されています。センターの助言等によって、販売業者とクレジット会社に対して未成年者契約として取り消すことによって無事に解決しています。
ところが、「未成年者取消し」は万能ではありません。
次回は、そういった事例について取り上げてみたいと思います。
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