【 2009年 第 9 回 】金銭教育その15 若者の消費者トラブル②~「未成年者取消し」は万能ではない!~ こどもとお金
高原 育代(タカハラ ヤスヨ)⇒プロフィール
前回は、消費者トラブルの「未成年者取消し」を取り上げました。
前回のコラムの最後でご紹介した、国民生活センターのサイトに事例が掲載されています。
一例として、「未成年者がキャッチセールスで購入させられた美顔器と化粧品」の相談例では、センターの助言等によって、販売業者とクレジット会社に対して未成年者契約として取り消すことによって無事に解決しています。
ただし、実際には、この事例のように、必ずしも契約の取消しや払ったお金の返還がされるとは限らないということも知っておかなくてはいけません。
「未成年者取消し」というのは、契約の相手方にとってみれば“それは反則だろ~!”と言いたくなるほどの強力な保護規定だといえるでしょう。
だからこそ、本当にこの規定を機能させるために、民法でも保護しきれない逆の場合についてもきちんと決められています。
未成年者取消しができない場合
第21条には、「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない」と規定されています。
未成年者が契約の段階で、自分が成年者であると年齢をごまかした場合や、親の同意があるとウソをついた場合などによって、それを信用した相手方に落ち度がないといったことが認められると契約を取り消すことはできなくなります。
相手をだますような未成年者であれば、民法も保護しきれないというわけです。
たとえば、親が携帯電話の契約を認めてくれないため、友達に親になりすましてもらって、販売店からの親の同意確認をすりぬけて契約するような事例もあります。
子どもにしてみれば、“ちょっとしたウソ”のつもりであっても、法律的に「詐欺的行為」だと認められれば、親が取消権を行使できなくなります。
日常の買い物も「契約」の1つ
携帯やインターネットの普及年齢が下がるにつれて、消費者トラブルに巻き込まれる年齢層も下がってきています。
親も日頃の生活では、「契約」とか「信用」とか「法律」などを意識して生活することはあまりないでしょう。
でも、毎日当たり前にやっている日常の買い物だって、「契約」の1つなのです。
店先での売買であれば、子どもに少額から体験させることもできます。小さな失敗を重ねるうちに、子どもものんびり成長していくことができます。
成長の過程では、親に対する“小さなウソ”ですら、必要悪と思える場面も親なら経験することでしょう。
でも、携帯やネットの普及によって、そんなにのんびりしたことはいっておられない、子どもがいきなり「大人の契約社会」に直面するということがあるということを親も覚悟しなければなりません。
そして、自分の子どもを守るために、子どもの年齢に合わせて「契約」とはどういうものであるか、注意しなければならないのはどういうことか…など、面倒であっても生活の中で、時を変え、場所を変えて、くり返し伝えていくことが、やはり親のつとめなのだろうと思います
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