【 2010年 第 1 回 】隠れ家的美術館~ 貴族の家で優雅にランチを フランス気分
横川 由里(ヨコカワ ユリ)⇒プロフィール
パリの美術館といえば、「モナリザ」や「ミロのビーナス」のあるルーブル美術館。「踊り子(ドガ)」や「ひまわり(ゴッホ)」のあるオルセー美術館。
ちょっと足を伸ばして、モネの睡蓮ファンなら、オランジュリー美術館やジベルニーが一般的です。
もちろん、有名美術館を外すことはできないけど、時間があったらぜひ行ってみたいのがパリ市内にある隠れ家的美術館。
ジャックマール・アンドレ美術館
シャンゼリゼ通りからそう遠くないところにある優雅な美術館です。日本からの友人には「貴族の気分が味わえる」大好評。ドラクロワ、ヴァンタイク、ボッティチェリなど有名な絵もたくさんあって、「やはり、絵画というものは、こういう場所にあって初めて価値があるのね」と改めて感心してしまいます。
このジャックマール・アンドレ美術館は、貴族の銀行家であるエドワール・アンドレと、その奥さまであるネリー・ジャックマールの2人の名前から付けられました。ネリー・ジャックマールはもともと肖像画家で、肖像画の依頼を受けたことがきっかけでアンドレと結婚。まさに、ハーレクイン・ロマンスの世界です。
もちろん、建物は19世紀に夫婦が建てたもので、実際に生活をしていました。吹き抜けのサロンや寝室には、当時の調度品がそのまま残っているのです。日本語のオーディオ・ガイドもあって、とても良心的。お屋敷の散策が終わったら、入口のそばのティールームでランチやお茶をいたしましょう。まるで、貴族の家に招待されたかのような気分になります。
ロマン派美術館
ムーラン・ルージュのそばにジョルジュ・サンドが、仲間と出会ったサロンがあります。通りには面していく、木に覆われた細い路地の奥にあるため、外から見ただけでは少し分かりにくいかもしれません。この屋敷に出入りをしていたのは、ショパン、ビクトール・ユーゴ、リスト、ドラクロワ、ツルゲーネフなど有名人ばかり。1階には、ジョルジュ・サンドの指輪などアクセサリ-類が展示されています。当時、ジョルジュ・サンドの恋人だったショパンの石膏の腕もあって、つい自分の手と比べてしまいます。
1階や2階の部屋には、時間がそのまま止まっているかのようなうっとりする素敵なインテリアの中に、作品が展示されています。作品の数は多くありませんが、ロマンチック派の芸術家たちの暮らしぶりが感じられ、建物ごと楽しむことができるのです。
美術館の横の庭園では、4月から10月までの期間を限定して、庭園カフェの営業も行っています。化学調味料は使わず、新鮮な食材を使ったヘルシーな手料理。特に5月から6月はバラが美しく咲きますよ。パリ市内なのに、静かな庭園でお茶ができる素敵な隠れ家的美術館です。
ギュスターブ・モロー美術館
お茶はできないけれど、私の大好きなギュスターブ・モローが生前アトリエにしていた建物です。現在は、そのまま彼の絵を展示しています。有名なサロメを題材としたものを始め、壁にはデッサンがずらり収納され、そのデッサン力に、ただただ感心。
作品の展示位置から調度品にいたるまで、モローの生前のままに留めてある世界で初めての個人美術館です。書斎や寝室などのプライべートな部屋であっても当時のまま見ることができるのです。この3つの美術館は、パリ市内にあるのでとても便利。大きな美術館に疲れたら、ぜひ足を延ばしてみましょう。
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