【 2009年 第 8 回】貸金業者の存在意義と貸金業法改正(1)~誰のための貸金業法改正か~ トピックス
松山 智彦(マツヤマ トモヒコ) ⇒プロフィール
ノンバンクと銀行との役割の違い
「金融」・・・・お金を融通すると書きます。設備投資などの理由でお金を必要としている人(需要者)が預金者などお金の余っている人(供給者)から融資を受ける事を金融といいます。
お金は経済の血液とも言われます。ことわざに「金は天下の回りモノ」というのは、お金が回ることで経済が活性化し、人々を豊かにさせます。しかし、それが行き過ぎる(いわゆる「バブル」)が起きるとその後に大きな痛手(不況・恐慌)が起きます。
そのため、経済およびお金の回りをコントロールする必要があります。それが中央銀行(日本の場合は日本銀行)の役割です。また市中にある銀行は、金融システムの中でも重要な役割があります。
前置きが長くなりましたが、お金を貸す場合、確実に返ってくるかが気になります。その返ってくる可能性のことをリスクといいます。
銀行は経済・金融の重要な役割があるがためにリスクを多く取れません。そのため銀行からの融資には担保が必要になります。万一貸したお金が返ってこなくても担保を処分して、元本をできるだけ確保します。
では、担保の提供ができない人はどうすればいいでしょうか?それは自らのクレジット(信用)を担保にお金を借りる事ができます。クレジットを担保に貸してくれるのがノンバンクです。
つまり、銀行は有担保、ノンバンクは無担保で金融ビジネスを行っています。
ノンバンクが万一貸したお金が返ってこなかった場合、どうすればいいでしょうか?その場合には、担保もありませんので、諦めるしかありません。つまり、リスクが高いので、その分金利が高いという事になります。だからちゃんと返済をしている人は、クレジットが高まってきますので、金利が下がっていく事になります。
※銀行には、 “カードローン“やクレジット機能を持たせたキャッシュカードなど、無担保融資の商品を置いているところもあります。
金利に上限が定められるとどうなるか?
「利息返還請求」が急増していますが、これはそもそも貸金業規制法43条に規定されている「みなし弁済規定」が2006年に最高裁でこの部分が事実上無効になり、利息制限法を越えた部分についての請求しているものです。消費者金融会社は、無担保・無保証のリスクプレミアム(ハイリスクに対する報酬)を「みなし弁済規定」の準用でカバーしてきた背景があります。
今回の貸金業法改正では、「みなし弁済規定」が廃止になり、適用できる金利は利息制限法に定めてらえているもの(10万円未満が20%、10万円以上100万円未満が18%、100万円以上が15%を上限とする)を超える事ができなくなるため、クレジットの低い人は、融資を受けられない事になります。
キャッシングの申込における制約率は2008年12月で29.5%と30%を切り、また08年の新規契約件数は前年度から20%以上減っています。さらに、融資を断られた人の45.8%は延滞経験がない人で占められています。融資を断られた人の10.8%は生活上の経費、23.8%は生活費の補填に当てる予定でした。つまりこれは、貸金業者が審査を厳しくし、融資できないケースが増えている事を指しています。
貸金業法改正は誰のため?
2003年に公布された貸金業法改正の最後の施行を来年にひかえ、廃業する貸金業者が増えています。1999年には3万社あったか資金業登録者数が2008年にはついに1万社を割ってしまいました。一方、いわゆる「ヤミ金」の被害については、検挙件数ベースでは、2006年に150件だったのが2008年には229件と、再びふえている状態です。その一方で、希望の融資を断られ、その後ヤミ金に申し込んだ割合は6%に上ります。貸金業の改正は、融資・審査の適正化、貸金業者の適正化にあります。ヤミ金や多重債務者の撲滅が目的のひとつであります。
しかし、私にはその目的の達成はほど遠いような気がします。さらにお金の流れを悪くする可能性があります。
貸金業法改正に携わった人には、このような経済的な痛みは、仕方ないとの意見を持った人もいますが、果たしてそれでよいのか?
その結果は来年以降にわかると思いますので、あえてコメントは控えたいと思います。
※データはすべて日本貸金業協会が、09年2月に公表したものを使用しています。
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