【 2010年 第 6 回】後悔しない住宅ローンの選び方⑥―住宅ローンの決め方・決まり方~その判断軸と妥協点 家計コラム
福田 英二(フクダ エイジ)
総返済負担額はローン借入額+支払利息額+諸費用額の総和
住宅ローン借入に伴う総返済負担額は、ローン借入額+支払利息額+諸費用額の総和で決まる。
ローン借入額(元金)は、購入物件価額+不足諸費用-充当自己資金によって決まる。
支払利息額は、ローン元金×利率×期間で求めるが、元利均等返済か元金均等返済かの返済方法の違いによって元金の減り方が異なり支払利息額が決まる。
諸費用額は、借入前、借入時、借入後に分けられる。それは調達先金融機関に拠って費用発生の有無が分かれるが、印紙代、抵当権設定費用など法的強制固定費と保証料、団信保険料、融資手数料、繰り上げ返済手数料と言った個別任意固定費等がある。
これらをチャート化したのが下図だ。
上述の総返済負担額決定3要素を両縦軸と下横軸にとった。即ち、右縦軸は金利水準軸であり、下が始点であり上に軸が伸びる。始点が金利水準が高く、終点のそれは低いを表す。左縦軸は諸費用負担軸であり、下が始点で費用が多額になる水準を示し、上に伸びた終点が少ない水準を示す。
下の横軸は、借り入れ期間と借り入れるローン金利の固定借り入れ期間を表す軸だ。左が始点で期間が短く、右が終点で期間が長いを示す。残った上横軸だがこれは借入人の精神的負担感を推し量る軸であり、左の始点が不安、もしくは不安定感を示し、右の終点に向かうほど安心度が増し安定した心理状態に有ることを示す軸とした。
こうした前提に立ってチャート上にレッドエリア、イエローエリア、グリーンエリアを示してみた。レッドエリアの中心にあるのが変動金利型住宅ローン、イエローエリアのそれは固定期間選択型住宅ローン、グリーンエリアのそれが全期間金利固定型住宅ローンである。
供給者サイドは売り易い変動金利をすすめる
ローン需要者が顕在化すると(大抵の場合不動産会社の店頭で顕在化する)、供給者サイドは売り易い商品として絶対金利の低い変動金利を勧める場合(レッドエリア)が多いようだ*。この説明は改めて必要ないと思うので他に譲る(第1回でも触れた)。ローン需要者が借り入れるにあたって何らかの事前情報を持っている場合などイエローエリアを指定したり、供給者の意見を求めたりする場合があったりする。
安心して返済できる精神状態こそが住宅ローン返済の要諦
グリーンエリアは、狭い。商品数が少ないからだ。供給者(この場合は金融機関だが)がこの領域のプロパー商品の提供を躊躇っていることが少ない原因の一つである(大半はフラット35と言うわけだ)*。なぜ躊躇うのかは、経営的にリスクが大きいと見るからに他ならないわけで、逆の立場のアドバイザーたちはここをよく解き明かしたコンサルトを心がけることが肝心であると思う。
なぜなら、このグリーンエリアの住宅ローンは、経済金融環境の変化を気にすることなく債務者が安心して返済していける生活感がえられるエリアであり、この債務者の精神状態こそが住宅ローン返済の要諦だと考えるからでもある。
結局、求める住宅ローンは、チャート上部点線で表したエリアの中から債務者が自分の価値観に合致したと思う商品を選択するわけで、それはあらゆる情報がインプットされて判断したわけでは必ずしもなく、アドバイスしてくれたサポーターの価値観に影響を受けることで決まる場合が多いこともまた忘れてはならないことだと心している。
*財団法人住宅金融普及協会のウェブサイトには491金融機関の住宅ローン商品情報1817件が登載されている。このうち変動金利型を取り扱う金融機関は、延べ527機関・605商品。期間35年もの住宅ローンを扱う金融機関は、延べ525機関・533商品、うちプロパーの35年ものを品揃えしているのは僅かに39機関・39商品にすぎなく、大半(486機関・494商品)は、フラット35を扱っているにすぎない。
この記事へのコメントはありません。