自社が評価されているかどうかを知るためのポイント【2010年 第1回】

【2010年 第1回】 自社が評価されているかどうかを知るためのポイント  銀行との上手な付き合い方

樗木 裕伸(オオテキ ヒロノブ)

銀行の選び方

まず、銀行との上手な付き合い方のてはじめとして「銀行の選び方」について書かせていただきます。
銀行の選び方といっても様々考えられると思いますが、「自社を評価してくれる銀行を選ぶ」ことは、とても大切ですよね。では、どんなポイントで自社が評価されているとわかるでしょう?

3つのポイント

評価といっても、製品開発力、生産技術、営業力、組織力・・・など数え上げれば、際限がありません。けれども銀行の取引先への対応の違いという視点で見ると、それら無数の評価が、次の3つのポイントに集約され、個々の対応がどうなっているかで、銀行のその取引先への評価が推し量ることができます。
(a)融資額
(b)融資条件
(c)情報提供
 です。

 

 

融資総額は、どれくらいか?

「融資額」については、金額の多寡で判断できるでしょう。つまり、大きいほど評価されていると言えます。

「では、小さな会社であっても融資額が多ければ評価されていると言えるの?」という声が聞こえそうです。銀行もバカではないので、そんな融資はありません。

業種・業態・取引慣行によって必要となる資金量というのは、異なりますが、概ね企業規模が大きくなると「必要となる資金量」(需資と呼んだりしてました)も大きくなります。融資総額が企業の規模拡大に応じて融資額も増額対応してくれているということは、その企業の事業に対して評価していると考えてよいと思います。

十分な額が融資されていますか?

銀行は必要な資金量を計算し、それに対してどれだけ融資するかを決定します。
例えば、その事業で100万円必要であることが計算でわかったとします。
このときに、銀行がいくら融資してくれるかということも一つの評価ポイントとして考えられます。

「十分評価」しているとすれば、100万円全額の融資の申出があるでしょう。
「通常の評価」であれば、80~90万円程度融資額とし、残額は自己資金(預金残高)で対応するような提案になるでしょう。

通常の評価の時、ちょっと減額になるわけですが、そういった対応が珍しいわけではなく、融資の基本的な対応といえます。むしろ全額対応する方がイレギュラー(評価されている)と捉えることができます。

身近な例では、住宅ローンがあります。銀行がかつて「えらかった(?)」頃は、住宅ローンは、頭金(自己資金)20%が準備できないお客様には融資しませんでした。それが、ここ数年10%になり、頭金0円でも融資するようになってきたのは、ご存知の通りです。相対的に銀行の立場が弱くなり、お客様優位(評価されるようになってきた)ことを意味しているわけです。

銀行は、確実に返済できると思う相手には、たくさん借りて欲しいけれど、ちょっと不安な相手(これが銀行の「通常の評価」です)には、融資額を削ろうとします。極端な場合は、融資を断ることもあります。こういった銀行の姿勢を揶揄して「晴れの日に傘を貸して、雨の日に傘を貸さない」とよく言われました。

では、さらに不安な相手(一般に「どうかな?」と思われる程度の評価)には、どうすると思います?
「さらに金額を削る!」

その通り!といいたいのですが、金額を削りすぎて融資案件自体がなくなってしまっては(顧客が借入をあきらめてしまっては)、銀行も商売になりません。そこで、貸出種別を替える申出がなされます。

あなたの会社の貸出種別は何?

どのような貸出種別で融資されているのかということは、単純な融資総額の多寡よりも、重要なポイントといえます。

貸出種別には信用保証協会付融資などの制度融資と銀行独自の審査能力に基づくプロパー融資があります。
それぞれに預金、不動産、有価証券などの担保を提供して借入れする有担保貸出と無担保融資である信用貸(しんようがし)があります。

言うまでもなくプロバー融資(特に信用貸)の金額が大きい方が評価されていると言えます。銀行によっては、プロパー融資先(有担保、無担保含む)とその他先(プロパー貸のない取引先、制度融資のみの取引先)ということで対応を分けている銀行もあります。

企業や経営者が担保を提供するのにも限界がありますから、信用貸で銀行が対応してくれないとビジネスの拡大期に資金調達で苦労することになります。銀行から信用を得ることで信用貸対象企業になれるわけですが、これは企業にとってひとつのステータスとなります。

けれども慎重な銀行に信用してもらい、融資を引っ張り出すのは、一朝一夕にはいきません。単に儲かって黒字企業であれば、信用貸をしてもらえるか、というとそれだけではないので、「銀行との付き合い方」は難しいといえます。円滑な資金調達には、「銀行取引」をよく理解した対応ノウハウの有無が必要になるのですが、その当りの『機微』を少しずつお伝えできればと思います。

 

 

 

今回は、「自社を評価してくれる銀行」の見分けるポイントで「融資額」を紹介しました。あなたの会社の融資はどうでしょう?今まで必要額が調達できているからいいや、と思っていた方、これを機会に点検してみてはいかがでしょうか。

次回は、ちょっと難しい話もでてきますが、2つ目のポイントの「融資条件」について書いてみようと思います。

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