【2010年 第 3 回】 自社が評価されているかどうかを知るためのポイント 銀行との上手な付き合い方
樗木 裕伸(オオテキ ヒロノブ)
今月は、第3回目として「自社が評価されているかどうかを知るためのポイント」として融資条件の要素である「貸出金利」を紹介します。
低い金利がいい!
「金利」は一般的に低い方が評価されていると言えます。
「そんなこと当たり前の話だろ!」
と思うかもしれませんが、実際は必ずしもそのようにはなっていないというのが実情です。
筆者の限られた経験の中で述べさせていただければ、「うるさい顧客」の金利が低いと言えます。財務内容が優良な企業であっても金利にうるさくなければ、金利が高止まっている企業はたくさんあるものです。自社の調達金利が高くないかどうかアンテナを高くする必要があります。
「うるさくすればいい」といっても、知り合いの会社が低い金利で借りている、という情報だけで銀行に対して強く出ると、資金調達がわかっていないという烙印が押され、逆効果になります。
同じ銀行からであっても「資金使途」(お金の使いみち)、「貸出期間」「担保条件」などによって適正「金利」も異なってきます。しっかりとセオリーを押さえた交渉をすることで「この会社は侮れないぞ!」と銀行に思わせることが大切です。
どのように、もしくは、どの程度「うるさく」すればいいのかについては、いろいろな要素をコラムでご紹介した後ということで、別の機会にしたいと思います。ここでは、貸出金利がどのような構成要素からなっているかを紹介します。
貸出金利はこうして決まる!
まずは、①調達金利です。
銀行にとっては、金融市場からの資金調達金利は仕入価格になるわけですから、当然販売価格である貸出金利に影響します。金融市場の資金需要が大きくなり供給不足になれば、金利が上昇し、供給過多になれば、金利が下落します。したがって、市場金利の変動が貸出金利に影響を与えます。
次は、②期間プレミアム(上乗せ金利)です。
貸出期間が長くなれば長くなるほどさまざまなリスクがでてきます。
一番のリスクは融資先の業況変化です。当初健全な優良先として貸し出していたのに、3年後に急に業績が悪くなるということはよくある話です。借り手は、返済期限までお金を借りている権利がありますから、金融機関が返済期限前に返済をせまることができません。この借り手の権利のことを法律的に「期限の利益」と呼びます(くわしくは次回コラム「貸出期間」でお話します)。
金融機関としては、将来の資金回収リスクを軽減するために、貸出期間の長さに応じて金利を上乗せします。1年以内は短期プライムレートで3年以内は+0.3%、5年以内は0.5%という具合です。
その次は、③信用リスクプレミアム(上乗せ金利)です。
個々の融資先の信用状態を審査し、「格付け」などにより適用金利を決めます。当然、業況不振の取引先の格付けが低くなり、高い金利が適用されます。
1社だけを見ると倒産するかしないかの「0」か「1」かに見えますが、同じような状況の企業が10,000社ぐらい集まるとそのうち何社ぐらいが回収不能になるかはかなり予測できるようになります。数十社の回収不能な資金を10,000社の信用リスク分の上乗せ金利でカバーするという考え方です。
最後は、銀行の支店の④マージンです。
銀行も本社(本部)と支店に分かれて業績管理をしています。支店は、本社から社内レートで借りた資金を取引先に貸し出します。逆に、お客様から預かった預金は、本社に社内レートで貸し出すという考え方で本部や支店毎の業績を計測しています。
社内的に決まったレートでももちろん評価はされるのですが、それを上回った金利で貸すことができれば、その分さらに支店評価が高くなるわけです。だまっていては、なかなか金利が下がらないという理由の1つは、その辺にあります。
先にも書きましたが、ここでは詳しくはお話しませんが、この①~④を意識して金利交渉することが要諦となります。
今月は、貸出金利について、お話させていただきました。「自社を評価してくれる銀行を選ぶ」ポイントとしては数字ではっきりと見えるところなので、かなり見極めやすいと思います。自社の適用金利がどのような理由で、その金利なのか考えてみるといろいろ感じるところもでてくるのではないでしょうか。
次回は、「貸出期間」からどのような点が見えてくるか、ご紹介したいと思います。
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