【2010年 第 6 回】 自社が評価されているかどうかを知るためのポイント 銀行との上手な付き合い方
樗木 裕伸(オオテキ ヒロノブ)
今月は、自社が評価されているかどうかのポイントとして「融資取引以外の取引」、つまり銀行が提供する「情報」「機能」「サービス」などに対する考え方についてご紹介します。
融資取引以外の取引とは?
銀行取引に期待するメイン機能は、融資取引(借入)という企業が多いでしょう。ですから、融資額や融資条件などを見るとその銀行に評価されているかどうかが、よく分かりました(コラム第1回~第5回参照)。
けれども銀行との付き合いは、融資取引以外の取引もたくさんあります。実は、それ以外の取引こそが評価されているかどうかがはっきりと差が出るといっても過言ではありません。
では、融資取引以外の取引には、どのようなものがあるでしょうか。
(1)情報提供
まず、融資取引以外の取引として、銀行本体が持っている「情報提供」が挙げられます。
例えば、新しい商品の紹介、金利・為替動向などの外為取引情報、海外進出のための基礎情報、不動産売買・賃貸情報などです。
(2)関連会社機能紹介
銀行には、たくさんの関連企業があります。これらの企業は、銀行法により本体の銀行でできない業務を行っています。
例えば、不動産会社、クレジットカード会社、保険代行会社、証券会社、ベンチャーキャピタル、ファクタリング会社、総合研究所などがあります。
(3)取引条件の優遇、サービス提供
融資取引以外の取引においても銀行は各種手数料などをもらっています。これらの手数料も交渉によっては優遇条件を引き出すことが可能です。
例えば、預金の金利優遇、送金手数料(国内、海外)、外国為替手数料など。
また、通常では行わないサービスなどを提供することもあります。
例えば、中元・歳暮などの付き合い。地域の名士などの葬儀の受付をやることもあります。また、以前はよくありましたが、集金などは減ってきています(有料化して継続している場合もあります)。
(4)営業支援
銀行が顧客の支援姿勢を端的に示すことを目的に、顧客の商品・サービスを紹介・購入することがあります。
例えば、ビルの建築案件を建設会社へ紹介、顧客商品の社員向け斡旋販売(クリスマスケーキ、お歳暮商品などから保険、自動車、マンションまで様々)、銀行の取引先同士の紹介などがあります。
(5)取引深耕(とりひきしんこう)、メインバンク化
銀行が永続的なメインバンク化を目的に資本や人事の交流を行う場合があります。
例えば、株式の持ち合い(5%未満)、銀行からの出向・転籍、企業オーナーのご子息の銀行への入社(将来は退職して事業承継、結婚退職)。
取引は、お互いのメリットが等しくなければ成り立たない
一般的に取引というものは、お互いメリットがないと長続きしないものです。つまり、長期的には次のような等式が成り立つはずです。
の不等式では取引関係は長続きしません。
(1)~(5)まで融資取引以外の取引をみてきましたが、「顧客側」「銀行側」、メリットはすべて等しいでしょうか?
「顧客側」にメリットのある取引もあれば、「銀行側」にメリットのある取引もあることがわかりますよね。
これらの「不等式」が成立するには、もちろん理由があります。
それが将来の取引に対する『期待感』です。この『期待感』が大きければ大きいほど、一見不等式に見える取引も成り立つことになります。
ですから銀行との様々な取引を等式に当てはめてみることによって、自社が評価されているかどうかも見えてくるわけです。
以下のようなグラフにしてみると御社と銀行との力関係がよくわかると思います。
顧客側にメリットが大きい取引(グラフ右下側)が多ければ、評価されていることになりますし、銀行側にメリットの大きい取引(グラフ左上側)が集中していれば、銀行に上手に利用されているのかも知れません。
今回は、自社が評価されているかの3つ目のポイントとして情報提供などを中心とした「融資取引以外の取引」の概要を紹介いたしました。
次回は、それぞれの取引を上記の図に整理して、どの程度自社が評価されているかを判断する材料をご提供したいと思います。
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