【 2010年 第 6 回 】ネットショッピング① 消費者を守る特別なルールとは ~消費者力をアップしよう
福島 久美子(フクシマ クミコ)⇒プロフィール
ネット取引はもはや日常の一部
本や食品、洋服の購入から航空券や旅行の申込など・・ネットを使っての取引はもはや日常の一部となりつつあります。あちこちお店を駆け回らなくてもクリックひとつで様々なものを購入したり申込ができるという便利さは、一度慣れるとやめられません。
ネット取引においても契約ごとは民法のルールに従うというのが基本ですが、ネットの特性上、民法の基本ルールだけでは対応できないケースが出てきました。
電子契約法
そこで、民法の特例という位置づけで平成13年に「電子契約法」*が施行され、民法の原則が修正されています。この電子契約法の中では、
1.電子商取引などにおける消費者の操作ミスの救済
2.電子商取引などにおける契約の成立時期の転換
という2つの内容を定めています。
消費者の操作ミスの救済
今回はネットショッピングなどでトラブルの多い1.の消費者の操作ミスの救済についてみていきます。
ところで電子契約法の対象になる契約とは、
①消費者と事業者との間で、②パソコンや携帯電話、コンビニ端末などを利用して、③事業者の用意した画面上の手続に従って行なわれる契約
のことを言います。
代表的なものにインターネット通販があります。
上記3つの条件全てに該当する必要があるので、たとえば個人間のネットオークションは基本的に対象外、事業者の設定したフォーマットを使わないで自分で自由にEメールに書いて送信するような申込も対象外など、該当しない場合は民法の原則に従うことになります。
どうなる?うっかりミスの注文
たとえばメロンを1個注文のつもりが間違えて111個と入力してしまった、とか
誤って申し込みボタンをついクリックしてしまった、などのうっかりミスで意図せぬ申込をしてしまった場合、契約は無効にできるでしょうか?
民法95条の原則どおりだと、勘違いでした契約は無効を主張できる、ただし、申込みの意思表示をした時に消費者に「重大な過失」があれば、無効の主張はできないことになっています。
ではネットでのうっかり入力ミスは、「重大な過失」にあたるのかどうか?
これを巡っては消費者側と業者側がそれぞれ違った主張をすることも考えられます。
そこで次のような確認措置の規定を設けています。
決め手は、確認措置があるかどうか
消費者と事業者との間のトラブルを避けるために電子契約法のルールでは、「事業者側が、消費者の申込内容などの意思を確認する措置をとっていなければ」契約の無効を主張できることとしています。
ここでいう確認の措置とは、
・ 一通り申し込みを終えると「このボタンをクリックすると購入となりますがよろしいですか?」など確認できるようになっている
・ 最終的な意思表示になる送信ボタンを押す前に申込内容が確認できて訂正できるような画面設定になっている
などの場合です。
つまり、業者がこのような確認措置をとっていれば、電子契約法による契約の無効は主張できないことになります。
例外もおさえておく
ネットショッピングには慣れているし、「面倒だから確認措置は要らない」と自ら選択した場合は、無効の主張は難しくなります。
たとえばワンクリックでそのまま注文が完了して契約を成立させるという方法を自ら選ぶような場合です。
確認画面って実は重要な意味を持っているんですね。面倒!などと思わずに内容をしっかり確認してからOKボタンを押すようにしたいものですね。
次回も引き続きネットショッピングのお話です。ネットショッピングの落とし穴って?
*「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」の略称。
参考資料: 経済産業省「電子契約法について」「電子契約法 逐条解説」
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