【 2010年 第 1 回】米国不動産事情 I アメリカ事情
竹内 守(タケウチ マモル)
今月から米国不動産・ファイナンシャル情報をお届けいたします。
アメリカの住宅差し押さえ
さて、皆さん日本でもよくニュースでお聞きになっているかと思いますが、アメリカでの住宅差し押さえが去年よりも増えています。2009年の総計では390万件ものローンが返済不能となると予想されており、なんと11月の銀行差し押さえ件数は、30万件以上に上ります。
アメリカでは、銀行が住宅を差し押さえることをフォークロージャーと言いますが、日本との大きな違いは、まず全ての住宅ローンがノーリコース、つまり銀行に取られても、個人資産からの支払い要求がないということです。その理由で、投資物件も含む住宅所有者が返済不能になると、多くの人が家を手放すという選択手段をとります。
救済できないオバマ政権の差し押さえ防止策
この経済危機の上、失業率の上昇により、さらなる差し押さえが増える状況にあります。2007年12月以来、720万人もの人が職を失っています。オバマ政権の差し押さえ防止策も、当初予定していた400万件の救済予定者のうち5%も満たない3.1万人しか救済できていないのが実態です。11月の銀行差し押さえ件数は30.7万件で、全米世帯数の417件に一件が差し押さえられていることになります。ネバダ州では119件に一件、フロリダ州では180件に1件という高い比率となっています。2009年1月から11月までの総数は360万件になり、一日一万件という数になります。
フォークロージャーのプロセスは日本のように裁判所が扱う場合と銀行が直接差し押さえる場合があります。州ごとに違いますが、銀行が差し押さえる州が多いようです。カリフォルニアの場合は、3ヶ月間滞納すると銀行が差し押さえるプロセスをはじめ、競売にかけたり、ポートフォリオ(バルク)にして専門業者と交渉の上、売却します。
インターネットでアクセス可能な不動産オークション
現在では、多くの不動産オークション会社が全米で、毎日のように住宅オークションが行われています。オークション会場にも参加ができますが、インターネットでアクセス可能ですので、全米からの投資家またはファーストホームバイヤーや、世界中から購入か可能になっています。各会社は、それぞれ仕入れた物件をあらかじめサイトで掲示していますので、投資家は十分に下調べをしてから、オークションに参加できます。
日本からでも、簡単に参加できますので、ご興味のある人は100年間も営業しているWilliam&William のサイトをご覧ください。
差し押さえ住宅問題が解消されない限り、アメリカ経済の好転はないことでしょう。
ただ、もうひとつの心配は商業物件です。今後は商業物件の差し押さえが続出すると予想されています。2010年、早く回復に向かうことを望みたいと思います。
それでは、来月は米国不動産システムをご報告します。
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