米国不動産システム【2010年 第 2 回】

【 2010年 第 2 回】米国不動産システム アメリカ事情

 竹内 守(タケウチ マモル)

皆様、お元気でお過ごしでしょうか?

2010年新年、オバマ大統領が就任1年を迎え、最初の一般教書演説を行い、内政重視、特に雇用に関することに重点を置いた演説を行いました。又、米国経済の舵取り役である連邦準備理事会のバーナンキ議長の2期目再任が決定されました。

 

落ち着きつつある米国不動産市場

米国不動産市場は、まだまだ本格的回復基調というわけではないですが、緩やかな売買件数増加や、住宅差し押さえ件数が、対前月比ベースで連続して減少という指標が出ております。不動産ローン金利は、一時、何ヶ月ぶりかの上昇を見せましたが、最近は落ち着いております。

今年の不動産売買は4月30日までに売買契約を結び、6月30日までに売買を完了すると、初回住宅購入者で、八千ドル、住宅所有者の買い替えで最高六千五百ドルの税額還付がありますので、今後の住宅市場に影響されることでしょう。

今回は、米国不動産売買において、法律で決められているエスクローとタイトル会社について、ご説明します。

エスクロー会社とは

エスクロー会社とは、中立的第三者で不動産の売買等に際して、購入者と売却者の間に立ち、必要書類の用意、売買代金の授受、頭金の管理等、取引が円滑に進むように管理をしている会社です。

不動産の売買になると書類も多岐にわたり、金額も大きくなりますが、例えてご説明しますと、イーベイや ヤフー等のオンラインオークションで取引が決定した後、購入金を払っても商品が届かなかったり、商品を送ったのに入金されなかったりというようなトラブルを避けるために、安全に取引を進めるための管理をする役割です。

エスクローのプロセス

プロセスは、売り手と買い手の間で売買契約が成立するところから始まります。双方の契約成立後、エスクローが開設され、買い主が、頭金の一部としての手付金と売買契約書をエスクローへ支払います。期間は30日や45日間が一般的で、この期間内に全ての取引を終了し名義変更、登記を完結させます。

担当者は州ライセンスを所持し、契約に基づきエスクローインストラクションと呼ばれる書類を作成します。この書類は、売り手・買い手の情報、購入金額、頭金、ローン額、取引終了日の明記、各種費用の支払い分担、タイトル会社名等が明記され、売り手・買い手両者の合意で署名されます。その後、タイトルレポート、タイトル保険の手配、シロアリ駆除に関するレポート、屋根・下水設備等にかかる調査書、売り手のローンの請求書、管理会社(コンドミニアムの場合)の書類、銀行からの買い手のローン書類等、各種必要書類の取得を開始します。

上記にて取得した書類などを基に、最終的な費用の見積をして、残金を買い手から受け取るとともにローン書類に署名、公証人による認証をする。その後、全ての書類の確認後、ローン書類を銀行に返します。エスクローは、銀行が融資を実行すると、その融資金を受け取り、登記をタイトル会社に依頼します。最後に、この取引で生じた金額の詳細を、売り手・買い手と列挙し差額分の請求をし、完結させます。

このようなエスクローシステムは、日本でも同様のサービスを行うところが出てきたそうですが、不動産取引を円滑に進めるためには無くてはならない存在で、多額の他人の金銭を扱うために、各州の法律によりかなり厳しく規制されています。

タイトル会社は、エスクロー会社と上記であげた売買の各プロセス通して密接に繋がっていますが、特に不動産売買においては、所有権の移転・名義の書き換え等の代行や権利瑕疵保険を発行します。

この保険証書を発行するために、各不動産物件に、所有者の移転・抵当権・先取特権の有無、各種税金の未払いや抵当流れなどの記録を各郡の登記所より取り寄せて管理をしています。全米の全ての住宅情報が管理されており、家の建設以来全ての所有者、権利、銀行情報が管理されています。近い将来は、日本でもこのシステムが取り入れられることでしょう。

次回は、アメリカでの相続計画についてご説明します。

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