アメリカでのエステートプラン~リビングトラスト、資産保全信託、生命保険信託の活用による相続計画~【2010年 第 3 回】

【 2010年 第 3 回】アメリカでのエステートプラン~リビングトラスト、資産保全信託、生命保険信託の活用による相続計画~ アメリカ事情

 竹内 守(タケウチ マモル)

各国の相続税事情

世界中には、相続税を課さない国・地域があることをご存知ですか?

オーストリア、スイス、シンガポール、ニュージーランド、オーストラリアは、相続税がありません。日本では、相続税は高く、被相続人が相続税を支払う法律になっていますが、ここアメリカでの相続税は、資産を分配する側が支払います。とはいっても、日本での相続税回避のために、相続税のない国に移住する人はすくないと思いますので、エステートプラン、即ち相続計画が重要になることでしょう。
今回は、一般的にアメリカでは、どのような相続計画をしているのか、ご紹介いたします。

アメリカの相続

相続税の非課税限度額は、年々変わっていますが、今年、2010年に亡くなられた場合のみ、一切相続税がかからないことになっています。昨年は$3.5ミリオンで、来年は$1ミリオンまでが、非課税枠となります。ご夫婦間での相続は、受け取る人がアメリカ市民の場合は、無制限に非課税ですが、非市民の場合は、制限があります。

 

アメリカでの相続計画は、一般的にトラスト(信託)を活用して、合法的に、相続税の回避、資産保全、相続での争いを避けるための遺言書の作成、健康状態や交通事故になって無意識状態になった場合に備えての委任状の作成等を、一度に信託にゆだねて、信託管理者に預けておきます。資産保全トラストは、相続税を回避するだけではなく、不動産、銀行預金、ファイナンシャルプラン、法人株、個人資産など大切に蓄えてこられた財産を守り、賢い贈与・相続を含め、安心したリタイアメントを送るために有効活用されているものです。そのため、資産内容により設定するトラストの種類も異なってきます。

米国内で、現在有効とされるトラストは、70数種類あると言われていますが、ここでは、代表的なリビングトラスト(生前信託)、資産保全信託、生命保険信託について簡単にその特徴・利点などをご説明します。

リビングトラスト(生前信託)

リビングトラストは、一般的に最も多く設立されている信託です。唯一の利点として、トラスト信託内にある資産は、検認裁判を避けることができることです。アメリカでは、この生前信託がない方は、全てプロベートと呼ばれる検認裁判が課せられます。遺書をお持ちの方でも、この裁判を通らないと資産の分配はできません。検認裁判は平均1、5年の日時がかかり、その間資産は全て凍結されますので、トラストの設立はとても大事なことです。

リビングトラストには、下記の特典があります。

1)計画通りの遺産分配を確定できる。
2)生存中は、ご自分の資産として管理が可能
3)資産内容の変更がいつでも可能
4)資産分配を詳細に示すことがきる。
5)扶養義務のある未成年の子供、年老いた親・親類の保護・後見人の依頼が可能
6)トラストの中に含めるのを忘れた資産も規定どおりに処理が可能
7)万が一生命維持装置が必要になった場合や、資産管理において判断不能の状態に陥った場合に、自分の代わりに判断して行動してくる代理人を任命できる。

資産保全信託

リビングトラスト同様、相続税の回避や、プロベート(検認裁判)を逃れることができる上に、下記の様な特典があります。

1)株券の移行が可能
2)訴訟・債権者からの個人・ビジネス・不動産資産の保全
3)資産相続の際は、相続税が100%免除
4)所得税上は個人の所得としての税務申告が可能

信託に委任された人(信託受託者)以外、いかなる組織・債権者もあなたの資産へのアクセスを不可能にする、真の意味での資産保全を確実にするトラストです。

生命保険信託

撤回不能生命保険信託と言われ、これを正しく設立しますと、相続人が受け取る死亡保険金には、所得税・遺産税・相続税(米国内では)が一切かからなくなります。

1)この信託が生命保険を所有
2)保険料を信託に贈与(贈与税は、一定額まで免除)
3)信託が死亡保障額を受け取り、信託書類に応じ相続人に分配される。

今後は、日本でも信託が一般的に確立されていくようです。信託設立は、富裕層だけが設立すると思われていますが、決してそうではありません。アメリカでは、信託設立によって、生前につくりあげた大切な資産をご自分の意思どおりにすべて信託に託して、家族内での争いごとを避けて、尊い資産分配が可能になります。

次回は、信託に関係する保険に関して、ご説明します。

  • コメント: 0

関連記事

  1. [ボーナス]自分のためのお勧め商品【2006年 第1回】

  2. シンガポールからの報告「『ダイバーシティ』を肌で感じる【2015年 第3回】

  3. 今月の数字6:6割になっちゃうなんて!!【2013年 第6回】

  4. 申告期限はなぜ10ヶ月?【2006年 第2回 】

  5. 九州・沖縄地方の財政事情と鹿児島市ならではの住民サービス【2012年 第12回】

  6. 山尾庸三と東京大学工学部 【2016年 第6回】

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。