【 2010年 第 9 回】アメリカ移民プログラム ~ アメリカ事情
竹内 守(タケウチ マモル)
米国永住権
通称グリーンカードと呼びますが、これほど欲しい人と欲しくない人でその価値が変わるものも少ないのではないでしょうか。何と言っても、これを得るために偽装結婚までする人が未だに絶えないぐらいです。特に今年9年目を迎えますが、2001年9月11日の同時多発テロ以降、不法移民を取り締まる為の法律が厳しくなり、最近ではアリゾナ州の法改正が物議を呼んだのは記憶に新しいところだと思います。
一方で、合法的に取得する法整備も整っております。アメリカ市民と結婚するのが一番早いとは言われていますが、上記のように偽装の疑いもあり得ますので審査自体はかなり厳格に行われます。
一般的には、非移民ビザと呼ばれる学生ビザや就労ビザ、あるいは駐在員ビザから永住権申請というのが多いですが、中でもO-1ビザと呼ばれる芸能、芸術、科学、スポーツ、ビジネスの分野において卓越した能力を有するビザ所有者が永住権を申請する場合、時間的にも早く取れるようです。私が知っている人では、某超有名日本人ミュージシャンで、巨額詐欺事件を起こした人が申請後数週間以内で取得できたとのことです。
それ以外にも、特に最近増えてきている日本人メジャーリーガーなんかも、このビザ所有者にあたります。中には、米国サイドから申請・取得に便宜を図るような場合もあります。当然、そういう人(要は、収入が高い人)が永住権をとると、それだけ多くの税収を得られますから米国にとってもメリットがあるからにほかなりません。
増えている永住権取得申請の方法
この米国にとってメリットがあるという理由から、もう一つ、最近特に、申請件数が増えている永住権取得申請の方法があります。EB-5と呼ばれるカテゴリーでの申請です。これは、毎月発表される、米国の平均失業率を越える地域において新たに雇用を創出・維持しようとする適格外国人に永住権を割り当てようとするもので、1990年の移民法改正により制定されました。その後、幾度かの改定が行われましたが、現在では概ね以下の基準となっています。
① 投資額が1ミリオン以上
Targeted Employment Areaと呼ばれる地域への投資の場合は50万ドル以上
② 最低10人以上の米国市民、あるいは永住権保持者など、合法的に米国内で働ける者の フルタイム(週35時間)の雇用を創出し、維持すること。
③ 投資家自身が、直接日々の経営に積極的に参加、あるいは、管理職、役員としてそのビジネスの経営に参加すること。
④ 投資に使う、あるいは、これから使う資金を合法的に得ていること。
⑤ 見せ掛けではなく、実際に投資後の2,3年間、一定の収益を上げる見込みがあること。
などが、条件として上げられています。これら全ての条件を満たしますと、通常、2年間の条件付の永住権が発給されます。2年後にも全ての条件を満たしていると移民局が判断すれば、正式な(と、いっても現在は10年毎に更新が必要な時限的な)永住権が発行されます。
移民局が公表した、実際の、このカテゴリーでの発給件数は以下の通りです。リーマンショック以降の2009年財政年度に発給数が急増しているのも興味深いところです。
同、2009年度と、2010年度第一&第二四半期までとの実際の申請件数と発給数です。まもなく、2010年度が終了しますが、さらに増加しているのは間違いないところだと思います。
不動産・オフィス物件などを購入し実際に管理・運営でも可能
実際に、現金で1ミリオン、50万ドルというとそれなりの額にはなりますが、現金だけではなく、機械や在庫、その他有形・無形資産も含まれます。また、申請時に全額必要というわけではありませんので、エリアを考慮に入れなければなりませんが、例えば、日本食レストランなどの大手フランチャイズを米国に広めるとか、そのエリア内にある不動産・オフィス物件などを購入し、実際に管理・運営するとかも条件にはあっています。
Targeted Employment Areaとは、移民局が指定した、人口2万人以上で、失業率が全米平均失業率の150%にある都市・地域のことです。(この記事執筆時では9.5%の150%の14.25%の失業率になります。)ここカリフォルニアで具体的に上げますと、最近市職員の破格の高給でニュースになったベル市や、ロサンゼルス~ラスベガスへの高速鉄道の主要幹線にある、バーストー市や、ビクタービル市(ランドバンキングでも有名な地域です)などが上げられます。
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