【 2010年 第 12 回】2011年のアメリカ ~ アメリカ事情
竹内 守(タケウチ マモル)
米国の2010年第3・四半期の実質GDP
米国の2010年第3・四半期の実質GDPの季節調整済み年率換算値は、対前期比プラス2.5%と、前期第2・四半期の同1.7%プラスからもわずかに加速し、5期連続でプラス成長となりました。
2007年12月に始まった1929年の大恐慌以来最長の景気後退期を2009年6月に脱したとする全米経済研究所の発表をちょうど裏付けるような結果となっています。
上向く個人消費
その中核を占める個人消費が2.6%プラスから上向いており、米国では感謝祭後のブラックマンデー、サイバーフライデーで始まる年末商戦の客足も対前年期8.7%増と好調なスタートを切っており、第4・四半期もプラス成長が続くとされているようです。
一方で、失業率は9%後半で高止まりし、企業の新規雇用の回復の遅れや、長期失業者の数が依然多いことにより住宅ローンの債務不履行や住宅差し押さえの発生は今でも高水準になっています。
下がる住宅取得意欲
この雇用情勢の先行き不透明さが、新たな住宅ローンを設定し、住宅を取得するというモチベーションを下げ、住宅市場の回復を遅らせている最大の要因といえるでしょう。特に直近の景気後退は、不動産ブーム・サブプライムローン問題に始まる住宅市場が基因となっており、その回復ペースによっては、2011年も引き続き米国経済に大きな影響を与えることでしょう。
金融緩和政策
このような経済状況下に、米連邦制度準備理事会は、11月3日の米連邦公開市場委員会で、追加的金融緩和策を発表し、さらなる緩和政策の可能性にも言及しました。この発表後、長期金利が上昇に転じたり、国内外から政策そのもの自体への非難の声や、米連邦制度準備理事会内での反対意見が出ていたりもしています。
大統領就任直後からリーマンショック後の経済政策、サブプライム後の様々な救済策、さらには、これまでどの大統領も成し得なかった医療保険改革の一応の法案成立と立て続けに数々の対策を行ってきたオバマ大統領が、中間選挙での下院惨敗を受け、2年後の再選を果たすために2011年に何かしらの政策の効果を挙げる必要があるため、不動産市況も含めた現状での緩やかな回復が期待されるとの見方が強いようです。
しかしながら、アメリカの経済・景気が東南アジアやヨーロッパでの様々なショックに耐えられる程は回復をしていないことから不透明感は払拭しきれないところが本音ではないでしょうか。
今年一年、本コラムでお付き合い頂きまして、誠に有難うございました。
2011年、良いお年をお迎えください。
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