【2010年 第3回】金投資の基礎知識 金投資
三次 理加 ⇒プロフィール
前回、金の魅力の一つとして、株や債券の価格変動との相関性の低さを挙げました。しかし、08年のリーマン・ショック以降は、株だけではなく原油など主要商品も軒並み下落。
分散投資先としての商品に疑問をもった方もいらっしゃるかもしれませんね。分散投資効果は本当になくなってしまったのか?
検証してみましょう。
リーマン・ブラザーズ破たん時のNY金
米大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破たんしたのは2008年9月15日。9月初旬から2月末までのNY株価の下落率は38.67%。一方、商品は、NY原油が59.20%、シカゴコーンが36.93%、シカゴ大豆は32.85%と、株価、商品のいずれも大きく下落しました。
ところが、NY金は16.29%の上昇となっていたのです。
株価と商品の値動きの連動性
株価と商品の値動きの連動性をもう少し細かくみてみましょう。図3-1は、2008年9月から2009年6月までの期間におけるNY株価と主要海外商品の月間の相関係数です。ちなみに相関係数とは、各変数の関連性の強さを表す尺度のひとつ。1からマイナス1の範囲の数値で表されます。相関係数が1であれば、その変数同士は全く同方向に動くことを示します。逆に相関係数がマイナス1の場合、その変数同士は全く逆方向に動くことを表しています。また、相関係数がゼロの場合、その変数同士は全く関連のない動きをしていることを表します。
図3-1に記した相関係数でみると、NY株価とNY原油、シカゴコーン、シカゴ大豆は、0.8を超え1に近い数値となっていることが何度かあります。逆に、マイナスとなっている月もあります。株価と連動している月もあれば、逆に動いている月もある、ということです。一方、金と株価の間では、マイナスとなる月が多くみられ、プラスとなっている月についても1よりはゼロに近い数値となっていることが多い傾向にあります。
分散投資効果が期待できる金
以上から考えると、株式で資産を運用している場合、分散投資として商品を資産に組み入れることは依然として有効であり、さらに、最近のデータでみる限り、他商品に比べ、特に金は分散投資効果が期待できる、といえるでしょう。
ただし、日本国内の投資家の場合、株価と商品価格との間の相関性は若干強くなる傾向があります(図3-2)。国内の株価は、為替(ドル/円)の影響を受けるものが数多くあります。また、日本は、ほとんどの商品を輸入しているため、主要上場商品のほとんどは為替(ドル/円)の影響を受けます。同じ為替の影響を受ける分だけ、短期的な相関関係が強まっているようです。
といっても最近のデータ(図3-2)を見る限りでは、株式に投資している国内投資家にとっても、分散投資先として期待できる商品は金である、といってもいいかもしれませんね。
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