金投資の基礎知識【2010年 第9回】

【2010年 第9回】金投資の基礎知識 金投資

三次 理加 ⇒プロフィール

前回まで2回に分けて、金先物取引について説明しました。一般的に金先物取引といえば、「将来の上昇を予想して買う」または「将来の下落を予想して売る」という売買を、実際の総取引金額よりも少ない資金で行う、というハイリスクな取引として認識されていると思います。
しかし、実際には、それ以外にも様々な活用手法があります。今回からは、それらを3回に分けて紹介していきます。

 

○日本一安く金を購入する方法

これまで説明したように、商品先物取引は期限までに総代金を支払えば、モノを受け取ることもできる取引でしたよね?これを「現受け」といいます。前回説明したように、現受けができる金先物取引は、東京工業品取引所(以下、東工取)に上場されている金標準取引です。

「現受け」を使えば、貴金属地金(じがね=延べ棒、バー、インゴット)を一般的な小売価格より安く購入することができます。どのくらい安いか?は、その時々により異なりますが1㎏あたり2~3万円程度です。

商品先物市場を利用すると、なぜ、一般的な小売価格より安く買えるのでしょうか?

その理由は二つあります。一つ目は小売店を通さずに、取引所から直接買い付けるため、コストがかからないということ。また、貴金属地金は、地金商で購入するとそのお店のブランドマークが刻印されています。
一方、取引所を利用した場合は、誰かが市場に売却した貴金属を買うだけ。つまり、二つ目の理由として、マークを刻印する手間がかからない分だけ安くなる、ということがいえます。そのため、取引所を利用して貴金属を購入した場合、ブランドは選べません。東工取指定ブランドのいずれかが手元に来ることになります。
ただし、貴金属は、ブランドによりその価値が変動することは、原則、ありません。ちなみに、現在の取り扱いブラントは、以下、東工取→(2013年2月12日東京商品取引所に変更)サイトをご参照ください。

http://www.tocom.or.jp/jp/guide/brand/index.html(現存しない)

○「現受け」で金を買うメリット

「現受け」を利用して貴金属を購入すれば、一般的な小売価格より安く買えるうえ、当初必要な資金は証拠金のみ。残りの資金は、総代金を用意しなければならない期限まで有効に活用することができます。また、買った後に価格が上昇した場合、転売して利益を確定させることも可能です。その場合、地金現物を売買するよりも安い手数料で売買することができます。

○「現受け」の注意点

なんだかメリットだらけのように聞こえるかもしれません。しかし「現受け」を使って貴金属を購入する場合、いくつか注意点があります。

まず、現物が手元に来るまでの時間差。地金商など小売店で貴金属を購入した場合、原則、総代金と現物を受け渡しするのは購入当日です。一方、「現受け」の場合、現物が手元に来るのは納会日の後の受渡日以降となります。
また、一般的には、消費税は、買った値段に5%を掛けて計算しますよね?しかし、現受けの場合、納会日の値段(=納会値)に5%を掛けて計算します。そのため、買い注文を出した時点では総代金がいくらになるかは分かりません。

以上のことから、買値より納会値が高くなった場合、買い注文を出した日に地金商で買ったほうが安かった、となることもあり得ます。つまり、「安く買える」というのは、あくまでも現時点において、現受けに係る想定総代金と地金商における総代金を比較したものである、ということです。

次に、現受けで受け渡しされるのは、基本的には倉荷証券です。倉荷証券とは「○○倉庫に金1Kgを保管しています」という証書のことです。商品先物取引において受渡決済を行う場合、原則、この倉荷証券を介して現物の受け渡しが行われます。倉庫から現物を出庫するには、別途出庫料が必要となります。取引会社がサービスで出庫を代行してくれる場合、手数料は会社により異なります。

さらに、現受けのための利用であっても、決済が完了するまでは通常の先物取引を行っていることと同様となります。そのため、相場変動によっては、前々回説明した追証拠金をはじめとする各種証拠金が必要となることもあり得ます。また、納会日の属する月(買った金の決済期限である月)になった場合には、定時増証拠金という証拠金を入金する必要があります。これら証拠金の追徴により口座内資金が不足となった場合、強制決済の対象となりますので口座状況は常にチェックするようにしましょう。

○「現受け」までの手続き

 現受けまでの手続きの流れは、図1の通りです。受け渡しされる地金は、1枚あたり、純度99.99%以上(通称フォーナイン)の金1Kgとなります。

 

 

 

 

 

現受けは、手続きがちょっとめんどくさいなぁ、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、前述したようなメリットもあります。また、貴金属を買いたくても近くに地金商がない、という方もいらっしゃることでしょう。そのような場合、商品取引会社のインターネット口座を利用すれば、手軽に地金を入手することができるので便利です。

ご参考までに、金など貴金属の現受け可能なネット取引会社の一覧を図2に記載しました。

 

 

 


なお、金地金を販売している商品取引会社であれば、商品先物市場を利用しなくても、現受けとほぼ同じくらい安い値段で金地金を買うことができるのでお勧めです。

  • コメント: 0

関連記事

  1. 介護とお金 【2011年 第12回 】

  2. 人生で、1番高い買い物は“家”- 大学生のためのパーソナル・ファイナンス 【2012年 第6回】

  3. 住宅 ~〔データから見るデータから見る地域の特徴〕雪降ろしとライフスタイルモデル【2006年 第1回】

  4. 今日の相続空模様④~相続手続きの対策って?~【2010年 第4回】

  5. 池田龍也 の ちょっと気になるニュースから 【第1回】 「円安、円高に一喜一憂するマーケットと植田日銀総裁のかじ取り」

  6. ブラジリアン柔術家 澤田真琴選手 後編【2012年 第11回】

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。