【2010年 第10回】金投資の基礎知識 金投資
三次 理加 ⇒プロフィール
一般的に、商品先物取引は「ハイリスク」と認識されています。しかし、活用次第では、「粗」利益を確定させた取引を行うことも可能です。これらの手法は、商社などがよく使っているものです。
今回から2回にわけて、その手法の基本を紹介しましょう。
価格に翻弄されず利益を追求する方法?
商品先物取引で利益を追求する方法は、「上昇を期待して買う」「下落を期待して売る」の二通り、だけではありません。価格の上昇・下落に翻弄されることなく、利益を追求する方法もあります。
「価格の上昇・下落に関係なく利益を追求?そんな方法があるの?」
と思った方もいらっしゃるかもしれませんね。それが、あるんです。
○現物と先物を組み合わせた取引
商品先物取引は、同じ東京金(=東京工業品取引所の金標準取引)であっても、限月(第8回コラム参照)によって価格が異なります。この限月間の価格差を鞘(=サヤ)といいます。この鞘を利用することにより、あらかじめ「粗」利益幅を確定させた取引を行うことが可能となります。
たとえば、金の価格が図1のように、当限(=決済日が一番近い限月)である6月限の価格が安く、先限(=決済日が一番遠い限月)である4月限の価格が高い状態の時に、次のような取引を行います。当限の6月限を2,534円で1枚(=1㎏)買い、同時に先限の4月限を2,576円で1枚(=1㎏)売ります。この時、売りと買いを同枚数にすること、売買を仕掛けるタイミングを同時にすることがポイントです。
この6月限は差金決済せずに、最終期限である納会日まで保有し、総代金を払って現受けします。この時、地金(じがね=延べ棒、バー、インゴット)は出庫せずに倉荷証券(第9回コラムを参照)のままにしておきます。その後、4月限が当限となり納会日を迎えた時、この現受けしておいた金倉荷証券を現渡し決済するのです。
こうすれば、gあたり42円の「粗利益」を得ることができます。この42円は、買いと売りを新規に建てた取引開始時に確定していますよね?つまり、その後の価格変動は関係ありません。
ちなみに、図1のように、当限の価格が安く、先限にいくに従って価格が高くなっていく状態を「順鞘(じゅんざや)」、逆に、当限の価格が高く、先限にいくに従って価格が安くなっていく状態を「逆鞘(ぎゃくざや)」といいます。
○注意点
ただし、第9回コラムでも説明したように、現受け・現渡しの際、総代金に係る消費税は、納会値で計算されます。また、倉荷証券を保有している期間は保管料が必要となります。保管料は、1か月を3期に分けて1期いくらと計算されます。この金額は、商品、商品の価格帯によって異なります。そのため、上記のような諸費用を考慮すると、取引開始時には「純」利益は確定していない、ということには注意してください。
さらに、このような取引であっても、先物市場における決済が完了するまでの期間は、通常の先物取引と同様、建玉(=成立した注文で未決済のもの、ポジションともいう)を保有していることになります。そのため、相場の変動によっては、第7回で説明した、追証拠金を始めとする各種証拠金が追徴されることもあり得ます。
また、その建玉が1番限(決済日が属する月になった場合)になった場合には、定時増証拠金(第9回コラム参照)を入金する必要があります。これら証拠金の追徴により口座内資金が不足となった場合、強制決済の対象となります。
以上を考慮すると、諸費用を大きく上回る鞘(価格差)が開いている時が取引チャンスといえます。
次回は、逆鞘の時に利益を追求する方法について紹介します。
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