今日の相続空模様⑤~養子は相続人になれる?~【2010年 第5回】

【2010年 第5回】 今日の相続空模様⑤~養子は相続人になれる?~ 家計コラム

平川すみこ ⇒プロフィール

養子は相続人になる?

養子縁組には2種類あります。普通養子縁組と特別養子縁組です。
普通養子縁組は、親子になる当事者の合意に基づいて届出をすることで成立します。
特別養子縁組は、子が原則6歳未満で実親が養育できない場合に、家庭裁判所の審判によって成立します。

養子縁組で養子となった者は、養親の相続人となります。
養子が数人いる場合でも、相続人となれる養子の人数に制限はありません。
10人であろうが、20人であろうが、全員相続人なのです。

また、民法における法定相続分は、実子とまったく同じであり、差をつけることはありません。

現行法では、それぞれの子の法定相続分は原則均等です。長男だから二男だからとか、女性で嫁いで姓が変わっているからとかでの区別はなく、人数で均等に分けることになっています。

亡くなった方(被相続人)の相続人が、配偶者がおらず、実子1人および養子3人だとすると、子は4人なので各自の法定相続分は4分の1ずつです。

相続における養子縁組の効果は?

民法上の相続人になれるのは、配偶者以外には、親族の中でも、子(代襲相続の孫等含む)、親(直系尊属)、兄弟姉妹(代襲相続の甥・姪含む)です。その中でも相続人になれる順位が決まっていて、被相続人に子がいれば親や兄弟姉妹は相続人となりません。

養子縁組するということは、優先順位の第1となる子を持つことになります。養子になった方は、第1順位の相続人となるのです。

遺言で相続人以外に財産を承継させることもできますが、財産を承継させたい方がいる場合は、その方を養子にするという方法もあります。(ただし、養子となる方が年下でなければなりませんし、その方の合意も必要ですが)

  • 孫を養子にする
    本来であれば、財産はまず子が相続し、子が死亡すると孫が相続することになりますが、孫を養子にすることで一世代飛ばして、直接財産を孫に相続させることができます。
  • 配偶者の連れ子を養子にする
    婚姻の相手方が結婚暦のある方で、お子さんを連れて再婚された場合。実の子同様だと思っていたとしても、養子縁組をしない限りその子は相続人にはなれません。財産を相続させたいのであれば、養子縁組をしておきましょう。
  • 子の配偶者を養子にする
    子が女性ばかりの場合、家を継いでもらうために、娘のお婿さんを養子にするという話はよく聞きますね。いわゆる婿養子です。この場合、もちろん養子となった娘のお婿さんは相続人になります。

では、息子のお嫁さんはどうでしょう?同居して世話をしてもらっていたとしても、お嫁さんのままでは相続人ではありません。養子にすることで相続人となり、財産を相続させることができます。

  • 甥や姪、親戚や知人を養子にする
    養子にすることで相続人となり、財産を相続させることができます。

相続税においては養子の人数制限に注意!

現在の日本の相続税は「法定相続分取得課税方式」です。
これは、実際の財産の取得状況に関係なく、法定相続人たちが法定相続分どおりに財産を分割したと仮定して税額を算出し、その合計額である「相続税の総額」を求めた上で、実際に財産を取得した者が取得した割合に応じて税額を負担するという方法です。

計算においては、まず相続税が課税される財産の合計額を求め、そこから無条件で「基礎控除額」が控除できます。基礎控除額の計算式は次のとおりですが、法定相続人が増えると基礎控除額も多くなります。

相続税の基礎控除額=5,000万円+1,000万円×法定相続人の数

また、死亡保険金や死亡退職金を相続人が受け取る場合、それらも相続税の課税対象になりますが、法定相続人の数に応じて一定金額まで非課税となります。これも法定相続人が増えると非課税となる金額が多くなります。

ということは、相続人の数を増やせば、相続税の納税額を減らすことができます。
相続人を増やす方法は・・・養子縁組ですね。
そして、納税する相続税を減らすためだけに相続人を増やそうとせっせと養子縁組をして子を増やす人がでてきてしまいました。

そこで、現在の相続税の計算においては、法定相続人とする養子の数に制限を設けています。
被相続人に実子がいれば、養子は1人まで
被相続人に実子がいなければ、養子は2人まで

つまり、亡くなった方(被相続人)の相続人が、配偶者がおらず、実子1人および養子3人だとすると、法定相続人は2人として、この2人が法定相続分に従って(この例では2分の1ずつ)分割したと仮定して、相続税の計算をするということです。

(注:特別養子縁組での養子や配偶者の連れ子で養子となった者は実子とみなされるため、人数制限はしなくてよいことになっています)

以上のように、養子に人数制限があるのは相続税の計算上での話であって、養子は全員相続人になります。ただし、安易な養子縁組は、遺産分割においてもめる要因にもなりかねませんので、十分に検討し他の相続人になる方へも配慮することが必要となるでしょう。

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