【2010年 第7回】 今日の相続空模様⑦~かわいい嫁に財産を遺すには~ 家計コラム
平川すみこ ⇒プロフィール
子どもの配偶者は相続人にはなれない
このコラムの連載を毎回読んでくださっている方は、子どもの配偶者は相続人になれないということは何度も目にしていただいているかと思います。
同居していて、どんなに血のつながった親子のようだ、いや、血のつながった我が子よりも親子の絆は強い!と思っていたとしても、実際には血族ではありませんので、子どもの配偶者は、あなたの相続人にはならないのです。
子どもがいれば、いずれは子どもの配偶者にも財産がいくわけですが、例えば<例1>のように長男が先に他界している場合で、長男のお嫁さんは自分たち義父母と同居し面倒をみてくれているという場合はどうでしょう。
自分が死んだ後には、この家はお嫁さんが引き継いで住み続けてくれればいいか、と思っていたとしても、他の相続人が家を相続すると、お嫁さんは追い出されて住む所がなくなってしまうかもしれません。どんなにお嫁さんが、義父母の世話をしたと主張しても、相続人から「相続する権利はない!」と一蹴されてしまえばそれまでなのです。
孫がいると救われる!?
長男が先に他界していたとしても、長男の子どもがいたらどうでしょうか?
長男の子ども(被相続人の孫)は代襲相続人になりますので、長男が相続するはずだった分を長男の子どもが代襲相続します。それであれば、家を長男の子どもが相続し、長男の妻と一緒に暮らせばいいと考えることもできます。
でも、長男の妻の所有物にはなりませんので、その家に必ず住めるとは限らないのです。家を相続した孫がすでに自宅を所有していて、住宅ローンの返済のために「おじいちゃんの家は売ってしまう」ことになるかもしれませんしね。
子どもの配偶者に財産を遺す方法は?
では、長男の子がいないとした場合に、長男の妻に財産を遺すにはどうしたらいいでしょうか。
- 子どもの配偶者と養子縁組をして子どもにする
養子になれば相続人となり相続分もあります。他の相続人たちと遺産分割協議もできます。ただし、他に相続人となる子どもたちに不満がでないように、養子縁組する理由を伝えて納得してもらってから養子縁組の手続きをしましょう。なお、長男が生きている間に長男の妻と養子縁組をし、その後長男夫婦が離婚した場合。婚姻関係は解消されても、長男の妻との養子縁組は自動的に解消されませんので、別途解消手続きをする必要があることに留意しておきましょう。
- 遺言で子どもの配偶者に遺贈する
遺言によって、相続人でない者へも財産を遺贈することができます。養子縁組できない場合などは、遺言を書いておきましょう。ただし、他に兄弟姉妹・甥姪以外の相続人がいる場合、その相続人には遺留分(最低相続できる権利分)があります。遺留分を侵害していると、遺贈する子どもの配偶者に「遺留分減殺請求」が行われてしまいますので、注意が必要です。
例えば<例1>の場合、長女Bと二男Cには各々4分の1の遺留分があります。全財産が自宅の土地と建物で2,000万円だとして、全財産を長男の妻に遺贈すると遺言していると、長女Bと長男Cから遺留分の侵害だとして、それぞれから4分の1の500万円分を請求されてしまうことがあります。
- 生前中に子どもの配偶者に贈与しておく
贈与であれば、相続人になるかどうかに関係なく自分の望む人へ財産を渡すことができます。ただし、贈与財産の価額が年110万円を超えると贈与税が課税されます。現金や有価証券であれば、年間110万円以内で贈与することもできますが、不動産は贈与税を覚悟の上で。
なお、いったん贈与すると配偶者の所有物になってしまいます。その後も仲良く義理の親子関係を継続できるのかを見極めることも必要かもしれません。
相続は「いつ」になるのか確定できないところに、対策の難しさがあります。直前では何もできなかったり、間に合わないこともあるし、早く対策をしても事情が変わったときに対応できないということもでてきてしまいます。
でも、「いつ」か確定できないからこそ、「かわいい嫁にも財産を」と考えているのであれば、今のご自身の希望や考えに沿った対策を講じておくことも大切なことではないかと思います。
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