【2010年 第8回】 今日の相続空模様⑧~兄弟姉妹が相続人になるとき~ 家計コラム
平川すみこ ⇒プロフィール
兄弟姉妹は第3順位の相続人
6月号のコラムのおさらいになりますが、相続人になれるのは、配偶者と血族相続人です。血族相続人には、養子縁組をした法定血族相続人も含みます。血族相続人は、相続人になれる順番が以下のように決められています。後順位の者は、先順位の者がいない場合に限って相続人になります。
第1順位:子(代襲、再代襲の相続人である孫やひ孫などの直系卑属含む)
第2順位:直系尊属
第3順位:兄弟姉妹
第1順位の子や代襲相続人もおらず、第2順位の直系尊属もいない場合は、第3順位の兄弟姉妹が相続人となります。
もし、相続人になるはずの兄弟姉妹が、被相続人より以前に死亡している場合は、その兄弟姉妹の子ども(被相続人の甥・姪)が代襲相続人になります。ただし、その甥・姪も以前に死亡していても再代襲相続はありません。現在の法律では、兄弟姉妹の代襲相続は一代限りとなっています。
この第3順位の兄弟姉妹が相続人になるということも忘れられがちですが、甥・姪にあたる者が亡くなった父もしくは母の兄弟姉妹が死亡した際に、自分が相続人になることがあるかもしれない、ということも忘れられがちだったりします。
一度、親族関係図を書き出してみて、確認しておくとよいかもしれませんね。
見知らぬ兄弟姉妹の存在に注意
さて、この兄弟姉妹の範囲には注意点があります。
兄弟姉妹というと、両親が同じ兄弟姉妹だけを思い浮かべがちですが、父親ももしくは母親が異なる、異父兄弟姉妹あるいは異母兄弟姉妹も兄弟姉妹として相続人になります。<図参照>
お父さんもしくはお母さんに再婚暦があることを知らなかったり、お父さんが認知した子どもがいることを知らない場合もあるでしょう。そのため、お父さん、お母さんの戸籍謄本も遡って調べていく必要があります。
その存在すら知らず、まったく会ったこともない異父・異母兄弟姉妹であっても、相続人になってしまうと、相続する権利があるわけですから、他の相続人たちが存在を見落として、その者を加えずに遺産分割協議を行っても、それは無効となってしまうのです。
配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合のトラブル
子どものいない夫婦の場合、自分が死んだら、親ももういないから、何もしなくても配偶者が自分の全財産を相続するからいいだろうと思いがちです。
でも、兄弟姉妹がいる場合は、相続分を主張してくることもあるでしょうし、遺産分割協議も一緒にしなければなりません。
財産が自宅の土地と建物しかないような場合、その自宅の土地、建物を配偶者と兄弟姉妹で共有持分にすることもあるでしょう。でも、自宅は欲しくない兄弟姉妹は現金で分けて欲しいと言うかもしれません。そうなると、配偶者は自宅を売って現金に換える必要もでてくるでしょう。
自分も疎遠になっている兄弟姉妹。ましてや配偶者にしてみると、ほとんど付き合いもない兄弟姉妹たちに気をつかったり、財産を分けなければいけなかったりと気苦労をかけることになります。
配偶者に全財産を遺すには?
以上のように、何もしていなければ配偶者と兄弟姉妹での遺産分割となり、配偶者が大変な想いをすることになります。
では、配偶者に全財産を遺すことはできないのでしょうか?
できます。遺言を作成しておけばよいのです。
兄弟姉妹がいることがわかっている場合はもちろん、異父・異母兄弟姉妹の存在が不明の場合もありますので、とにもかくにも、子どものいない夫婦の場合は、いつ自分が亡くなってもいいように遺言を作成しておきましょう!
内容は、「配偶者○○に全財産を相続させる」でよいのです。
兄弟姉妹には「遺留分」の権利がありませんので、遺言で自分の最低相続できる権利分(これを遺留分といいます)が取得できないとしても、配偶者に対して「遺留分」の財産をくれという請求はできません。
(※「遺留分」については、また後月のコラムで詳しく説明する予定です。)
相続人が誰になるのか、その確定はとても重要です。
残される配偶者のことを思いやるのであれば、兄弟姉妹が相続人になることを知らなかった、忘れていた、ということがないようにしたいものです。
生きている間にしっかりと相続人を確定し、対策を講じておくことが大事ですね。
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