【2010年 第11回 】不動産投資に関連する法律 不動産投資
大倉 修治⇒ プロフィール
不動産の取引にはさまざまな法律が関係してきますので、不動産投資を行う上ではある程度の法律知識が必要になってきます。しかし、全ての法律をきちんと理解することは難しいといえます。
今回は、不動産取引に関連する法律の体系と不動産投資を行う上で押さえておきたい「借地借家法」に関することについて見ていくことにします。
1)不動産取引に関連する法律の体系
不動産を取り巻く法律には、所有する、利用するといった「権利」に関する法律、不動産を利用する上での「行政上のルール」に関する法律、不動産の売買、賃貸といった取引上のルールを定めた「取引」に関する法律の大きく3つに分類することができます。それぞれに該当する代表的な法律およびその概要は次のとおりです。
①「権利」に関する法律
- 民法
個人間の財産や身分上の関係などを規定した法律
- 借地借家法
借地権(建物の所有を目的とする地上権と土地賃借権)、借家権の契約・効力に関することなどについて定めた法律。民法の特例的な位置づけにある。
- 区分所有法
マンションなど共同で所有する建物における基本的なルールを定めた法律。
②「行政上のルール」に関する法律
- 都市計画法
都市計画(≒街づくり)の枠組みと実施を図るための基本的なルールを定めた法律。区域ごとに建物の用途の制限を定めたりする。
- 建築基準法
人が安全に暮らせるように建物の敷地、構造、用途に関する最低基準を定めた法律。道路と敷地の関係、建物の規模や高さなどについて規制する。
※上記以外にも、国土利用計画法、農地法などがあります。
③「取引」に関する法律
- 宅地建物取引業法
宅地建物取引業者(≒不動産業者)の業務に関する基本的なルールを定めた法律。不動産の購入者などの利益を保護なども目的としている。
- 消費者契約法
消費者の保護を目的とし、一定の条件を満たした場合には契約を取り消すことができることを定めた法律。不動産売買においては、売主が不動産業者、買主が個人の場合に適用される(売主が一般個人もしくは買主が法人の場合は適用外)。
- 住宅の品質確保の促進に関する法律
欠陥住宅などに関するトラブルを解決すること目的として設けられた法律。住宅性能表示や瑕疵担保責任に関することなどを規定している。
2)借地借家法
借地借家法とは、土地や建物の貸主と借主のルールを定めたものです。不動産投資は、不動産を賃貸し、賃料収入を得ることなどを目的としますので、押さえておきたい法律のひとつと言えるでしょう。
ポイントは、どちらかと言うと「借主」を保護することを目的としていることです。
建物の賃貸借契約(貸主と借主間の有償の契約)を結ぶ場合、通常、2~3年の契約期間を定めます。しかし、契約期間の満了時に、貸主(家主)に“正当な事由”がない限り、契約は法定更新されてしまいます。“正当な事由”には、貸主が自らその建物の使用を必要とする事情や建物の老朽化、立退き料を支払うといったものがありますが、簡単には認められません。
また、契約期間中であっても、契約書に中途解約に関する特約条項があれば、借主は事前に予告することによって中途解約できます。このような日本の借家制度は、世界の標準と比べると特殊といえます。
これでは、土地の有効な活用が妨げられてしまうということで、平成12年3月1日に正当な事由がなくても期間満了時に借家契約が終了する「定期借家制度」が導入されました。特徴は、契約の更新がない(更新する場合は再契約となる)ことや契約期間の設定が自由な点などです。この制度を活用すれば、一定期間の賃料収入を確定させることができるので、安定した賃貸経営が可能になるなどのメリットがあります。
ただ、新規の契約のみにしか適用されないことなど、一定の要件を充たす必要がありますので、現状は既存の“正当な事由”が必要な借家制度と定期借家制度の両方が存在することになります。
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