【 2010年 第 11 回 】共用部分の変更 マンションの暮らしを快適に
福本 喜保(フクモト ヨシヤス)
共用部分の変更
共用部分の変更は、区分所有者及び議決権のそれぞれ4分の3以上の多数による集会の決議が必要です。但し、区分所有者の定数については、規約で過半数に減らすことができます。この変更によって、専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければなりません。
変更とは、物の性質や用途、機能等を変えることで、相当程度物質的変更を伴うことをいいます。変更の中で改良を目的とし、著しく費用を要しないものは、管理に関する事項と同様の取扱いなります。
管理に関する事項とは、変更以外の日常的な維持管理に関する事項のことをいいますが、両者の区別は、個々の具体的事案ごとに判断することになります。
共用部分の変更は総会の決議が必須
「形状又は効用の著しい変更」は区分所有者・議決権の各四分の三の特別決議、「その形状または効用の著しい変更を伴わないもの」は各過半数の普通決議が必要です。
建物の外壁塗装工事の場合、材質、機能等を変更せず従前と同一の塗装工事を行うときには管理に関する事項になることが多いと思われます。
建物の維持保全のためには定期的に大規模修繕等を行う必要がありますが、それが通常の管理の範囲をこえ、変更に該当することがあります。
このような場合に、少数の反対で工事ができないのでは、建物の老朽化を放置することになります。そこで区分所有者全員で討議し、合理的な結論を得る方法として集会の多数決があります。
区分所有者の定数については、規約で過半数まで減らすことができます。
等価交換方式(マンション・ビル等)では旧地権者(地主)等が多数の専有部分を区分所有することが多くなるので、議決権よりも区分所有者の定数を重んじることになります。
特別の影響
共用部分の変更が多数決議の原則によって決定、実施されますと、一部の区分所有者の利益が不当に損なわれる恐れがあるために、一部の区分所有者の利益を保護するために設けられたものです。相当程度影響を及ぼすものに限定されます。
(例)
①その工事によって専有部分への出入りが不自由になる。
②変更の結果、専有部分の日照、通風が著しく悪化する。
③区分所有者が共用部分に専用使用権を有する場合に、共用部分の変更によりその専用使用権を侵害する。
バルコニー・ベランダ
法律上は原則として共用部分とされ、専用使用権が設定されています。
専有部分とすると、区分所有者が勝手に模様替えや改造することができることになり、建物全体の景観、外観を損なうおそれがあります。また、火災発生などの緊急時に、仕切り板を破って隣のバルコニーやベランダに移る避難通路としての用途を合わせ持っています。
バルコニー・ベランダ等で禁止されることとなるケースの主な事項は下記の通りです。
① バルコニー等に物置、サンルーム等の建造物を構築又は設置すること
② バルコニー等の住戸の境の仕切り板付近に物を置くこと
③ バルコニー等の手摺りに植木鉢をおくこと
④ バルコニー等に土砂を搬入して花壇等を作ること
⑤ バルコニー等で洗濯し水を流すこと
⑥ バルコニー等の外壁面より外側に洗濯物等を干すこと
⑦ バルコニー等に爆発性、引火性のある物を置くこと
建物の保存に有害な行為
外壁に穴をあけて換気扇を取り付ける、クーラーの屋外機をベランダに設置し、配管を壁に這わせる等マンションの壁を勝手に取壊すことは許されず、原状回復することが条件とされます。
例
① 住戸の増築
② バルコニーの改築
③ 建物の主要構造部に影響を及ぼす破損・穴あけ等の行為
共用部分の変更決議ケース
普通決議で実施できる
・鉄部塗装工事 ・外壁補修工事 ・屋上防水工事
・給水管、排水管更新工事 ・エレベーター更新工事
・照明工事 ・テレビ共聴設備工事 ・ボイラー更新工事
普通決議でのグレードアップ工事
・階段にスロープを併設バリアフリー化工事
・基本的構造部分への加工が小さい工事
構造体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置
・共用部分の加工が小さな工事
オートロック設備、防犯カメラ、防犯灯
・玄関ドア、窓枠、窓ガラス、玄関扉の交換
・高置水槽の撤去、受水槽の撤去
特別決議が必要になる場合
・集会室・管理事務室の増築、エレベーターの増築など外観形状が大きく変化する工事
・住戸をつなげる工事、階段室をエレベーターに改造する工事
・受水槽室を倉庫や会議室に転用する場合
マンションでは勝手に工事・設置物等ができない場合がありますので、不明な点等があれば管理会社・専門家(マンション管理士等)等に相談等をする。
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