【 2010年 第 12 回 】エンディングじゃないノートだからこそ、今を大切に④~自分の「生活」を「時間」の切り口でふり返る ”終わり”ではない「エンディングノート」
高原 育代(タカハラ ヤスヨ)⇒プロフィール
人生を左右する要素の時間とお金
前回までは、今とこれからの自分のために、まず「身体」について“過去”をふり返り、“未来”に向けて目標を立てるといったことについて考えてきました。
次に、人生を左右する要素としてとりあげていきたいのは、「時間」と「お金」です。
最近あちこちで注目度が高まっている、一般的な「エンディングノート」には、財産を整理する項目が必ず含まれています。
私がNPO活動の中で、仲間と企画・編集した「ハッピーライフノート」にも、もちろんそういう「お金」に関わるページもあります。が、それに先立って、「時間」との関わりをふり返るページを入れてあります。
それは、どんな人にも平等に与えられている「時間」は、その人の生き方や暮らし方に深く結びついているものだと考えたからです。
どんな世代の人にとっても、その気になれば、「時間」と積極的に向き合うチャンスはあるのです。
ノートに書き出すということは、具体的に目に見える形にする絶好の機会というわけです。
生活時間割の作成
そこで、自分の行動をふり返る“ものさし”として、「年単位」や「週単位」で考える「生活時間割」を作成してみてはいかがでしょうか。
まず、「年単位」の生活時間割。これは「私(わが家)の年中行事表」といった感じの一覧表です。
タテ・ヨコいずれかの軸に、まず「項目」をとり、それに対して「1~12月」それぞれの月にどんなイベントがあるか、あるいはどんな行動をしているかなどを書き込んでいきます。
主婦なら主婦の、お勤めの方なら勤務先での…といった具合に、それぞれ月ごとに決まったスケジュールがあると思います。それを一覧表として書き出していくのです。
「ハッピーライフノート」では、ヨコ軸の項目を6つ入れました。
例として、<自分…健康診断の受診、美容、資格の更新など><家族…誕生日や記念日、先祖の墓参りや法事など><友人その他おつきあい…中元・歳暮、年賀状、同窓会など>を挙げています。
自分の役割を意識する
このヒントになったのは、私のお気に入りの一冊「7つの習慣」という本です。
その続編である「7つの習慣 最優先事項~『人生の選択』と時間の原則」では、緊急度と重要度の視点から時間管理をマトリックスで考える方法が提案されています。その中で、自分の<役割>を意識して、それぞれの<役割>に対しての目標を選んで時間を管理するという方法は、私にとって目からウロコでした。
どんな人も、一人の人間でありながら、常にいくつかの<役割>をこなしているものではないでしょうか。
例えば、私自身をふり返ってみると、「妻」「母親」「長男の嫁」「子どもの学校のPTA役員」「一人暮らしの母親を持つ娘」「ファイナンシャルプランナー」「NPO法人の理事」そして「一人の女性」など、その時々で自分のいくつもの<役割>を使い分けてこなしています。
そういった<役割>を意識してみると、「生活時間割」も広がりのあるものになると思います。
次に「週単位」の「生活時間割」。こちらは、スケジュール帳の1ページを抜き出したようなものです。
タテ軸には0:00から24:00までの「時間」を、ヨコ軸には月~日の「曜日」をとり、自分の毎日の時間の使い方をふり返るために書き込んでいきます。
日頃の過ごし方を書いておく
基本的には自分自身のために書き込む目的ですが、「エンディングノート」として活用することもできます。例えば、一人暮らしの親がノートに日頃の過ごし方を書き出しておいてくれると、病気や老いによって世話をすることになった場合にも役立てることができます。
以前目にしたある新聞の地域情報版に、介護ヘルパー女性の投稿に印象深いものがありました。
仕事としての移動入浴は、世話をする側の都合上、朝や昼間の明るい時間になってしまいます。が、世話をされる方のひとことで本当は元気だった頃のように夕食後に入浴したいという気持ちを知ります。「ごめんなぁ、こっちの都合に合わせてもらって」などのやりとりなど、そのヘルパーの方の優しさに感動するとともに、長年の生活リズムの大切さを考えさせられた記事でした。
このコラムの8月でご紹介した介護の場面で「本人本位ケア」をめざす【センター方式】のシート「Bシート群:暮らしの情報」の中にも、1日の過ごし方を記入する欄があります。
シート記入欄には、長年なじんだ過ごし方と現在の過ごし方を記入できるようになっています。介護の場面で、その人が築いてきたなじみの暮らし方が継続できるような支援に活用しようというものです。
親の介護や自分の老後といったものは、誰しも先延ばしにしたいシーンかもしれません。
が、こういった「生活時間割」を何かのきっかけに、自分と時間のつきあい方をふり返ってみることは大切なことだと思います。
年末年始が近いこの時期になると、「来年の一冊」を求めて本屋さんなどに立ち寄る方も多いことでしょう。
でも、店頭に並ぶ、大小さまざま色とりどりの手帳やスケジュール帳を前に、どれを選んだらいいのか迷ってしまうということはありませんか?
そんな時は、手帳選びの前に、自分の生き方や暮らし方をふり返ってみると“気づき”が得られるかもしれません。
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